しょうせつ

それは、とある日の任務での出来事。
俺はいつものように暴れまくる団長に付き従って地球に来ていた。
団長はいつものように任務中にもかかわらず強い奴を捜し求め、
やっとそこそこ強い奴を見つけたと思ったらすぐに殺してしまった。
そしてその尻拭い(という名の始末書)を、その日も書き上げる予定だったのだ。

『ぎょわあぁぁぁ!?ささっ、殺人現場ァァ!?』

しかし、その日は違った。

「あちゃー……マズい所を見られちまったなぁ。
 お嬢さん、警察に行くなら俺たちが去った後にしてくれ、面倒だから。」
『にょおぉ!?わわっ、分かった!!』

その日は偶然にも、地球人の孤児が殺しの現場にやって来てしまったのだ。
まぁ、今回団長の標的になったのは密入国者だったみたいだし、
別に顔を見られた所で困ることも無い。
今すぐ面倒にならなければ、サツにでもお上にでも勝手に言えばいい。

しかもこの孤児(15、6歳程の女だ)は
今まで裏の世界で生き抜いて来たためか非常に物分りがよく、
おまけに度胸もあるようなので害は無いだろうと思う。
面倒ごとが増えなくて良かった、と俺は小さく溜息をついた。
そして団長を連れて帰ろうとしたその時。

ドオオォォォォォン!!!!!!!ぎゃあぁぁぁぁぁ!?』

団長が急にその孤児に攻撃を仕掛けやがった。

「ちょまっ、団長ォォォ!?何してんだアンタ!!!!
 いいから!ソイツ別に殺さなくていいから!!」
「何で?」
「何でじゃねぇよォすっとこどっこい!!!!
 面倒は少ないに限るんだよ!そいつ地球人だぞ!?」
「だって……殺されそうなんだ、コイツに。」
「『はぁぁぁ!?』」

慌てる俺と奇跡的に団長の攻撃を避けた孤児は声を合わせた。
さっきのデカいのはそこそこ強そうだったし、まぁ団長だから仕方が無い。
でもコイツはただの地球人の孤児のガキだ。
このままここで建物を破壊され続けたら始末書に書く理由が非常に不名誉だ。
『地球人のガキ相手に本気になりました』なんて書いてみろ、笑いもんだぞ!

「この女を見ていると息が出来なくなって苦しいんだ。
 コイツの事、直視出来ない……気持ち悪いんだ、この感じ。
 コイツが居たら俺、頭がパーンってなって死んじゃうよ。」
『なんじゃそりゃ……。』
「……え?うそっ、団長?それってもしかして……。」

俺はへたり込む孤児の女の前で立ち尽くしている団長を見つめた。
心なしか顔が赤い……気がする。(パッと見はいつものような白い肌だが)
それに、今まで見たことが無いような表情をしている。
苦しそうな、つらそうな、そんな顔だ。
俺は意を決して団長に尋ねてみた。

「アンタ、そのガキに惚れたのか?」
「何言ってんの?俺が弱い地球人の女になんか惚れるわけないじゃん。」

団長は特に焦った様子もなく淡々と答えたが、それにしてもおかしい。
一応この人は女子供は殺さない主義だ。(すぐ折れる主義だが)
急に見ず知らずの女に攻撃を仕掛けるなんて、動揺しているに違いない。
その動揺の原因がこの女にあるらしい。これは紛うこと無き恋だ。

「ちょ、お嬢ちゃん。」
『は、はい?』

俺は団長の前で座り込んでいる小娘に声をかけた。
すると小娘はちょっと驚きはしたものの、すぐに返事を返してくる。
やっぱり肝っ玉だけは据わっているようだ。

「お前さん、ちょっと団長の手ぇ握ってみてくれ。団長は動かんで下さいよ。」
『は、はぁ……。』

小娘は困った顔をしながらもその場で立ち上がり、団長に近づいた。
団長はちょっと俺の方を睨んだが、悪い気はしていないらしく、
小娘が近づいて来るのをジっと見つめていた。

『あの……失礼します。』

小娘は団長に断りを入れてから恐る恐る手を握った。
すると、団長は一瞬ビクッと体を震わせ、そのまま後ろへ1、2歩後ずさりをした。

「……何コレ、超苦しい。胸の辺りが気持ち悪い……。」
「じゃあお嬢ちゃんに手ぇ放してもらうか?」
「…………。」
「ほれ見たことか。やっぱり恋なんじゃねーか。自覚しろ自覚。」

俺は面倒くさそうにそう言って頭を掻いた。
団長はさっきからずっと動かない。小娘は困惑したままだ。

『あ、あの……。』
「…………阿伏兎、コイツ傍において置けないかな。」

瞬き一つせず固まっていた団長が急にそんな事を言い出した。
俺は団長の意外な(そして非常に自分勝手な)言葉に内心非常に驚きつつ、
まぁ望みは薄いがアイツが団長を変えてくれたら
俺の仕事もちょっとは楽になるよなぁ、なんて事を考えた。

「アンタが大人しくなるってんなら、元老なんか俺が黙らせてやるよ。」
「約束は出来ないけど、頼んだよ。」

冗談半分で言ってみれば、予想外の即答が返ってきた。
おいおい、本気で言ってんのかアンタ。

『えっ!?ちょっと待って!!!アタシの意思は!?』

さっきまで困惑していた小娘が弾けたようにそう叫んだ。
コイツは孤児で根性もあるだろうし、
度胸があるので多分春雨でもやっていけるだろう。
そう考えた俺はあえて何も言わずに踵を返した。
すると団長は小娘の手を(明らかに力づくで)引いて俺の後に付いてきた。
小娘はさらに喚いているが、団長の力には敵わないようだ。

『ちょっと待ってってば!!!!アタシの人権はぁぁ!?』
「そんなものないよ。どうせ孤児なんだろ?何も問題ないじゃないか。」
『うそぉぉぉん!?』

こうして、未来の安穏のために今日の面倒ごとが一つ増える事となった。




凶暴男にご用心

(会って数秒で拉致なんて……) (拉致なんて人聞きの悪い。俺たち結婚するだろ?これは立派な嫁入りだよ) (Σさらに数秒で発展してるぅぅ!?) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 書いた後に名前変換が無いのに気づくとか夢書き失格だと思いました作文! ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2009/11/28 管理人:かほ