ウチの団長様はとーっても気まぐれだ。 こないだ阿伏兎さんが言ってたけど、動物に例えるなら性悪猫。 猫みたいに愛嬌はないけど、性格は自由奔放で自分勝手。 しかも自分のペースに周りを巻き込む才能はピカ一だと言っていた。 アタシはと言うと、実はつい先日まで第五師団に所属していたので 第七師団の団長様は超絶イケメンだ、くらいの情報しか知らなかった。 だから阿伏兎さんの言葉も深刻に受け止めていなかったし、 イケメンに良くある自己中程度だろうと軽く受け止めていた。 しかし、それがとんでもなく大きな間違いであったことに、 つい今しがた気づいたのだった。 「ねぇ。は俺のこと好き?むしろ愛してる?」 脈絡のない団長の問いに、阿伏兎さんと云業さんが大きなため息をついた。 アタシだって驚いて声が出ない。 なぜなら、ここは戦場のド真ん中で、 周りはダニだかノミだか知らない戦闘部族に囲まれている。 そんな緊迫した状況下で、そんなこと聞くか?フツー。 『あの、団長。寝言は寝てから言って下さい。』 「一緒に寝ようだなんて、は大胆だなぁ。」 『あのすみません、人の話聞いてくれます?』 「じゃあ今夜あたり俺と一発ヤる? 俺テクニシャンだから、一回味わったらもう他の男と寝られなくなっちゃうよ。」 アタシの言葉を無視して笑顔で話し続ける団長に、アタシは深い溜息をついた。 『アタシ団長と寝る気なんてこれっぽっちもありませんから。 ってか敵に集中して下さい。今戦いの真っ只中なんですよ?』 「うん、恋愛という名の戦争ね。」 「無視しろ。相手にするとさらにつけ上がるぞ。」 「団長……。」 アタシと団長が傍から見たら漫才のような会話を繰り広げていると、 痺れを切らした阿伏兎さんがキッツいツッコミを入れてきて、 団長馬鹿の云業さんは呆れ返った顔でそう呟いた。 ここで相手のダニ族(ダキニ族だっけ?)が一斉にアタシ達を畳みかけに来る。 「何コイツ等、空気読めないの?俺がせっかくにプロポーズしてるのに。」 『え!?さっきのプロポーズだったんですか!?』 「よそ見すんな!」 「阿伏兎も後ろ後ろー!!」 とんでも発言でアタシや阿伏兎さんや云業さんを掻き回しておきながら、 自分はちゃっかり向かってきた相手を全滅させているというフリーダム性。 これが噂に聞く神威団長か…………思ってたよりもよっぽど最悪だ。 団長のせいでちょっと負傷したアタシ達は 涼しい顔の団長様を思いっきり睨んでやった。 『ちょっと団長!アンタのせいで気ぃとられた!!』 「え?俺に惚れた?」 「言ってねぇだろ!アンタいい加減にしろ!!」 「ちょ、ちゃんも阿伏兎も落ち着けって……。」 アタシたちは止める云業さんを無視して口喧嘩をしながら ブッ倒れている荼吉尼族の山を通り抜けた。 途中、まだ息がある奴は阿伏兎さんが止めをさしているが、 団長はもう動かなくなった奴に興味はないらしく、 お腹がすいたなんてぬかしながらさっさと歩いて行ってしまう。 『何あの人。想像を遥かに上回る自分勝手っぷりなんですけど。』 「第七師団に居る以上、アレとは一生離れられねぇと思っとけ。」 『うわ最悪。こんな事ならアタシ第五師団のままが良かった……。』 「まぁまぁちゃん。団長もあれでいいとこあるし。」 「『例えば?』」 「あ、阿伏兎まで……。」 云業さんの言葉にアタシと阿伏兎さんが声を揃えれば、 言った本人は非常に落胆して引きつった苦笑いをした。 「、俺の隣においでよ。 そんなむさ苦しいオッサン達の間になんて居ないでさ。」 『すみません、アタシ超絶イケメンよりもオッサン派なんで。』 「超絶イケメンだなんて照れるじゃないか。 それは遠回しなプロボーズと受け取ってもいいのかな?」 『ちょ、誰か通訳連れてきて。』 全く話の(いやむしろ遠まわしな嫌味が)通じない団長にアタシが死んだ目でそう言えば、 隣では阿伏兎さんと云業さんが深い深いため息をついていた。 これ話通じなさすぎるよね、一種の才能だよねあのポジティブ思考。 上司に向かって失礼だけど、ウザいですってハッキリ言っちゃってもいいのかな? 「そうだ。入団のお祝いまだしてなかったよね?」 ふと思い出したかのようにそう言いながら、団長はくるりと後ろを振り向いた。 『え?お祝い?してくれるんですか?』 「うん。俺から特別なお祝いをあげるよ。」 『あれ、雲行きが怪しいな……数秒前の喜んだ自分を殴ってやりたい。』 「今夜の夜のお供になってあげてもいいよ?」 『丁重にお断りさせて頂きます。』 雲行きが怪しいどころか清々しいほどの大雨洪水警報に、 アタシは深々と頭を下げて心底お断りしますの意を示した。 すると団長は徐にアタシに近づいてきて、ポン、と肩に手を置いて笑いかけてきた。 「まぁ拒否されても俺が無理やりプレゼントするんだけどね。」 『阿伏兎さん助けて下さい今日は3人で一緒に寝ましょう!!!!!』 「はぁ!?俺達を巻き込むんじゃねーよ!」 「えっ、ってか俺も入ってる!?」 アタシの突然の申し出に阿伏兎さんと云業さんが心底驚いた声を出した。 しかも言いながらアタシが阿伏兎さんに抱きついたので、 素早い団長の殺気に阿伏兎さんは冷や汗ダラダラだ。 「……何で俺と寝るのが駄目でそいつ等はOKなの?」 『だって団長ヤる気満々だもん!この人たちもう終わってるから安心出来るもん!』 「オイてめぇ、終わってるって一体どういう意味だコラ。」 思わぬ失言に阿伏兎さんがガッとアタシの頭を掴み、怖い顔で睨んでくる。 でもそんな阿伏兎さんよりも団長に捕まる方が万倍も怖いアタシは ギリギリと締め付けられる頭の痛みに耐えながら団長に言い続けた。 『アタシ今日は片時も阿伏兎さんと云業さんの傍を離れません!』 「おいテメー!勝手に決めるんじゃねぇよ!」 「でも便所と風呂は離れるんだろ?」 「団長それセクハラ。」 『離れません!!!!!』 「「えぇぇ!?」」 驚いたような困ったような鬱陶しがったような声で叫んだ2人の体は、 次の瞬間浴びせられた団長の殺気のこもった視線のせいで汗びっしょりになっていた。これが我等の団長様です
(ま、待て団長!俺たちは無実だ!) (ちゃん!ちゃんからも何とか言ってくれ!) (もちろん着替えも2人の前でします!) ((Σ状況が悪化しただろうがァァ!!)) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ みんな仲良し第七師団! ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/09/18 管理人:かほ