「団長、いい加減にしてくれよ……見つかりっこねぇって。」 俺は思いっきり呆れた声で目の前で揺れている三つ編みに声をかけた。 しかし、三つ編みからの返事は返ってこない。 まぁこんな反応いつもの事だが、今日はいつもとは少し事情が違う。 俺は地球に来て何度目か分からない深い溜息を吐いた。 事の発端は言うまでもなく、我等が団長様のワガママだ。 吉原の一件が先日ようやっと一段落ついたというのに、 今度は地球に行って嫁探しをすると言い出しやがった。 「阿伏兎、お前もついて来るかい?」 団長の言葉は明らかに疑問形だが、勿論俺に選択権はない。 まぁそんな事は日常茶飯事なので今更ツッコむ勇気も断る勇気もないわけだが、 それよりも何よりも、俺は団長の発言に言葉を失った。 あの戦いにしか興味がない根っからの夜兎族の団長が、嫁探しだと? 最初は何を寝ぼけた事を言っているんだと思ったが、 俺はすぐに吉原で団長がえらく気に入った女が居たことを思い出した。 確か、治癒能力を持った半分天人の女で、 腕っ節はそんなに強くはなかったが、気だけは人一倍強かったはずだ。 俺を背負って春雨の母艦に帰る途中、 団長が嬉しそうに「やっと見つけたよ、俺に釣り合う女」と笑っていた日が懐かしい。 「(あの時は聞き流してたけど、アレ本気だったんだなぁ……)」 俺は目の前でキョロキョロと辺りを見回している団長の姿に、また溜息をついた。 「阿伏兎、お前もサボってないで探しなよ。」 俺の溜息がお気に召さなかったのか、団長は俺の方を振り向いて文句をたれた。 何で俺がそんな文句言われなきゃなんねーんだ。 そもそも俺は地球の女なんかに興味ねぇっての。 「あのなぁ団長、この広い江戸で名前しか分からない女一人探すんだぜ? 無謀にも程があるだろ。分かったらさっさと母艦に帰って……。」 「ねぇ、って女知らない?」 「ちょっ、俺の話聞いてる?団長、いい加減諦めろって……。」 俺が溜め息をつきながら心底呆れた声でそう言えば、 団長が声をかけた男が「あぁ、ちゃんかい」と言葉を返した。 「あの子なら万事屋に居るよ。その道をまっすぐ行けば見えてくる。」 「そうなんだ、どうも。」 道行く地球人に名を出せば、すぐに居場所が判明した。 少し上機嫌になった(ように見えた)団長は地球人に礼を言い、 言われた通りの道を一人スタスタと進んでいく。 「…………。」 取り残された俺はまた深い溜息を吐きながら頭を抱えた。 全く……たまたま出会った通行人Aに名前を聞いただけで居場所が分かるって、 一体どんな女なんだアイツは……面倒な事にならなきゃいいが……。 そんな事を心の中で考えつつ、俺はワガママ上司の後を追った。見つけたよ、俺の嫁候補
(云業、何で死んじまったんだ……俺一人じゃあのバカは面倒見きれねぇよ……) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 昔の文章があまりにも居た堪れなかったので書き直しました。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/10/24 管理人:かほ