しょうせつ
2人とも、ちょっとそこに正座しなさい!!!!』

一番奥にあった机を放り投げた後、
呆気に取られる団長と銀髪にがビシッとそう言った。
そしてあろうことかあの団長を床に正座させ、かれこれ10分位は説教している。

ここで一番驚くべきポイントは、
が思ったよりも馬鹿力だったということでも、
家がほぼ全壊状態であっても騒ぎにならないこの町でもなく、
ましてや家具や家電が飛んできても大惨事にならない往来でもない。
驚くべきは、団長が素直にの言う事を聞いて正座しているという事実だ。

『そりゃ最後はアタシも机投げちゃったけど、
 アンタは勝手に人様の家で暴れすぎ!銀時は逃げ回りすぎ!』

ビシッ、ビシッと団長と銀髪を順番に指差し、は怒ったようにそう言った。
そして腕組み仁王立ちというなんとも分かりやすい格好で2人を見下ろす。
俺が立っている位置からは団長と銀髪の後姿しか見えないが、
雰囲気だけでも団長が相当喜んでいるということが分かった。

「俺に説教なんていい度胸だね。やっぱりは面白いや。」
『黙りなさい!お説教だって分かってるんなら真剣に話を聞いて!』
「聞いてるよ。ほら、真面目な顔。」
『それただ笑ってないだけでしょ?ちょっと顔がニヤけてるわよ。』
「は手厳しいなぁ。」

そんなやり取りの後も、はガミガミと2人に説教をし続けた。
途中、何故か助さん角さんの話になっていたが、
銀髪も、あの団長でさえも、一言も口答えをせずの話を聞いていた。

団長がを嫁にするとか言い出した時は勝手にしろと思ったもんだが、
こうして大人しく人の言う事を聞いている団長を見せ付けられちゃ、
一家に一台、もとい春雨に一人はが欲しくなってきたな。
あの団長を唯一正座させられる女として。とても便利だ。

『分かった!?じゃあさっさと表に転がってるものを家の中に運んで!
 そこのオジさんはアタシと一緒に部屋の掃除をして下さいね!』
「あ、あぁ……。」

ボーっとしていたところを急にに指差され、俺は驚きながらも返事をした。
と言うか、俺に対しては一応敬語を使うのか……。
どうやら目上の人間への礼儀はなっているようだ。
やっぱりコイツ春雨にほしいなぁ、なんてぼんやりと考えていたが、
その場合団長の嫉妬をどうにかしなければいけなくなるので、
本気でを春雨に連れて行くのはコレの対策案を思いついてからにしよう。

「、俺が一緒に掃除してあげるよ。」

俺が団長の嫉妬対策について悩んでいると、その団長がに声をかけた。
その声に意外そうに団長を見る。

『え?何で?掃除やりたいの?』
「いや、ただと一緒がいいだけ。」
『却下!!』

素直すぎる(というか馬鹿な)団長の発言はによってバッサリ却下され、
その声を合図に銀髪と団長は渋々立ち上がり、玄関の方に歩いて行った。

「阿伏兎。」
「あん?」

途中、団長が俺の傍で立ち止まって声をかけてきたので、俺は軽く返事をした。

「と2人っきりになるからって変なことしたら殺すからね。」

団長はニッコリと俺に笑いかけてそのまま外に出て行った。
いやいやいや、俺何も悪くないのに何このプレッシャー。
って言うか元はと言えばこんなトコで暴れたアンタが悪いんだろーが!!
そう反論したかったのは山々なのだが、
例によって俺は「はいはい、」と軽く返事をしてその場をやり過ごした。

そして2人がちゃんと下に降りて行ったのを確認すると、
は携帯でどこかにメールを打ち始めた。

「何してんだ?」
『え?あぁ、知り合いの名前使ってデリバリー大工を呼んだんです。』
「知り合いの?」
『はい。そいつボンボンなんで、金はあっち持ちで。』
「…………。」

さっきから礼儀正しいし常識もあるし、まともな人間だと思っていたが、
どうやらあの銀髪と一緒に居る時点で
ちょっと道を踏み外していると認識した方が良さそうだ。

「で?俺は何をすればいい?」
『そうですね……とりあえずそこら辺の瓦礫片付けてくれます?
 あ、あと、家具とか家電の弁償代はちゃんと請求しますからね。』

あぁ……やっぱりそこんトコはキッチリ請求されるのか。
まぁ団長が暴れて壊しちまったんだから
俺たちが弁償するのは当然と言えば当然なのだが、
ただでさえ団長の不祥事で春雨には多額の借りがあるというのに、
その上また危険な仕事ただ働きと引き換えに金を借りなければならないのか……。

そこまで考えて、俺は大きな溜息をついた。




ご利用は計画的

(なんか、吉原の時とギャップがありすぎて対応に困ります) (何だいきなり……俺もお前のこと勘違いしてたみてーだ) (え?アタシ?) (思ってたよりも凶暴な女だった) (殴りますよ?) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ よく言えば裏表のない、悪く言えばおバカなお兄さんは好きですか? ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/10/24 管理人:かほ