「ったくよー、人ん家で好き勝手暴れてくれちゃってさぁ。 おまけに俺まで連帯責任でに怒られちまったじゃねーか。 どうしてくれるんだコノヤロー。」 俺はそんなことをグチグチ言いながらアホ毛野郎と一緒に家具を2階に運んでいた。 どうやらババァ達は留守にしているようなので小言を言われずに済みそうだ。 「お侍さん、の保護者代わりって本当なの?」 「あぁん?何だよ急に。本当だって言ってんだろーが。」 俺がさっきから目の前で文句を言っているというのに、 このアホ毛は俺の言葉には一切触れず、さっきの話をまた蒸し返してきた。 何なんだよコイツ、吉原で会った時からなんかヤベー奴だとは思っていたが、 ヤベーくらい強いっつーよりはヤベーくらい馬鹿じゃねーか。 全然人の話聞かないもん、全然人の話理解しないもん。 「お侍さんとはそんなに歳が離れていないだろ?それなのに親代わりなの?」 「そうだよ。攘夷戦争中に俺がボロボロになってたアイツを拾ったんだよ。 これ嘘じゃねーからな、本当だからな。あと嫉妬すんじゃねぇぞ。」 「ふぅん……。」 まだ完全に納得していないのか、 アホ毛は生返事をしながらテレビを2階に投げつけた。 勿論、着地したテレビが原型を留めているはずもなく、 2階からはテレビが破壊した音との悲鳴が聞こえてきた。 「はお侍さんと一緒だよ。弱いくせに強いんだ。 俺は強い人間にしか興味はないけど、君たちだけは例外。」 「…………。」 張り付いたような笑顔でそう言うアホ毛に、俺は溜息をついた。 「に言い寄るのはいいがなぁ、アイツは人殺しが大っ嫌いだぞ。」 「そうなの?攘夷戦争に参加してたのに?」 「は人を殺した事はねぇよ。天人ならボコボコに殺ってたけど。」 「どうして?も半分は天人の血が流れてるんだろ?」 アホ毛がそう言った時、が2階から 『物を投げるな!壊れるでしょーが!!』と怒鳴りながら顔を出したが、 アホ毛はお構いナシに最後の家具である俺の愛用机を2階に投げ込んだ。 また聞こえてきたの悲鳴を聞きながら、俺は2階への階段に足をかける。 「が人殺しと天人を嫌ってんのは、の両親が天人に殺されたからだよ。」 アホ毛の反応は見ないまま、俺は階段を登った。 すると意外にもアホ毛はすぐに俺の後ろをついてきた。 そこまで興味がなかったのか、それともそんなに衝撃的じゃなかったのか。 まぁコイツ生粋の夜兎だって言ってたし、 人が死んだとか殺されたとか、聞きなれてんのかもしれねーな。 『テメェェ!!!!喧嘩売ってんのかァァ!!!!!』 俺たちが万事屋に戻ってくると、 先ほどアホ毛に机を投げつけられたがカンカンに怒っていた。 それをオッサンがまぁまぁと宥めている。 『止めないで下さい阿伏兎さん!!!!』 「悪かった!今のは団長が悪かった!だからちょっと落ち着け!」 『あんな奴一発くらい殴ってやりゃあいいんですよ!!』 「お前はいいかもしれんが俺がダメだから!!後が怖いから!!」 が言っている“阿伏兎さん”っつーのはあのオッサンの名前だろうか。 もしそうだとしたらこの2人、 あの短時間で名前で呼び合うくらい仲良しになっちゃったってことか? 世の中何があるか分からねーもんだな。 そんな事を考えながら必死でを宥めるオッサンを眺めていると、 俺の後ろに立っているアホ毛から殺気のようなものを感じた。 オッサンも大変だなぁ、こんな扱いにくい上司を持って。 俺は思わずオッサンに同情し、 吉原でのことはちょっとだけ水に流してやろうかなと思った。 「。」 俺の後ろで殺気を放っていたアホ毛が急にの名前を呼んで、 おもむろにの方に歩み寄って行った。 するとは怒った顔のままアホ毛を見て『あぁん!?』と返事をした。 『何よ!謝る気になった!?』 「俺と結婚しようか。」 『喧嘩売りにわざわざコッチまで来たのかコノヤロォォ!!!!!』 アホ毛の言葉にまたが怒ってアホ毛に飛びかかろうとしたのを、 やれやれと頭を抱えたオッサンが首根っこを掴んで阻止した。 何だあのチームワーク。もしかして上で2人で練習してた? 俺がそんな事を考えていたら、アホ毛が真面目な顔でにこう言った。 「違うよ、プロポーズしに来たんじゃないか。 、俺は本気だよ。は初めて俺が惚れた女だ。力づくでも俺の嫁にする。」 『…………ッ!!!!』 アホ毛の言葉に、その場に居た全員が言葉を失った。本気の告白
(団長……なんつー歯の浮くセリフを……) (コイツ言う事がいちいち恥ずかしいな……) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 再執筆したら一章が長くなっちゃったって言う罠。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/10/24 管理人:かほ