「気づくのが遅ぇーぞテメーら……殺されてぇのか。」 さっきからずっと入り口で待ちぼうけを食らっていた夜兎のオッサンは 明らかにイライラした声でそう言い、だらだらと部屋に入ってきた。 俺とは先日オッサンに会っているし、 あのバカに振り回されている可哀想なオッサンを知っているので ここにオッサンが居ることも部屋に入ってきた事も大して気にはしなかったのだが、 吉原でボコボコにやられたという苦い過去を持つ神楽と新八は 急に入ってきたオッサンを思いきり睨みつけながら拳を構えていた。 そういえば、このあいだオッサンとバカが帰った後、 すぐにデリバリー大工が来て家を修理しちまったから、 買い物から帰ってきた神楽と新八に事情を説明すんのが面倒くさくて、 「俺とでプロレスごっこしてた」とか言って誤魔化したんだっけ。 ヤベェな、あの時の怠惰が今日になって仇になるとは。 とりあえず、今はガキ共の敵意をどうにかする事が先決か……。 『一体どうしたんですか?何で阿伏兎さんが一人で地球に?神威は?』 俺がこの状況の解決策を考えていると、が華麗に地雷を踏んづけた。 もちろんこのあいだの出来事を全然知らない神楽と新八は目をひん剥き、 奴等を馴れ馴れしく名前で呼んで話しかけるを凝視した。 「……今何ていったアルか?」 『えっ、何?アタシ何か悪い事言った?』 「さん、どうしてコイツ等を名前で……。」 とオッサンの仲の良さに神楽と新八が驚いている中、 オッサンはガキ共の様子に状況を把握してくれたようだったが、 だけは空気を読み間違えたのか、立て続けに地雷を踏んづけた。 『え?あぁ……いや、呼ばなきゃ殺すって……。』 「殺す!?あのバカ兄貴、いつの間にを脅してたアルか!!!!」 『いやっ、違う!ゴメンゴメン!表現が悪かった!』 「さん離れて下さい!!そいつは僕たちが相手しますから!!」 『違うの!神楽ちゃん、新ちゃん、ちょっと落ち着いて!』 はやっと自分の言葉が誤解を招いていることに気づき、 オッサンに拳を構える2人を慌てて抑止した。 「どうして止めるんですかさん!!」 『アタシが悪かった!ちょっと落ち着こうか!お茶でも入れようか!?』 そう言いながら俺にジェンガを片付けさせ、 はとりあえず2人をソファに座らせてお茶を淹れに台所へと向かった。 この緊迫した空気の中一体何してやがんだコイツはと思ったが、 どうやら2人はがオッサンを全く警戒していない事に気づいたらしく、 渋々ながらもが帰ってくるのを大人しく座って待っていた。 そしてお茶を人数分淹れてきたがオッサンに座るように促し、 オッサンはのそのそ歩きながら俺の隣にドサッと腰掛けた。 その後、は神楽と新八に先日ココで起こった大騒動の話をし、 勿論2人はかなり驚いていたが、とりあえずオッサンへの警戒は解いたようだ。 『……というわけで、吉原でのことは一旦水に流してあげてくれる?』 「さんがそう言うなら、僕達は別にいいですけど……。」 にお願いされ、新八はちょっと不服そうにそう言った。 そして新八が神楽に同意を求めようと口を開いた瞬間、 急に神楽がその場で立ち上がり、こめかみに青筋を立てながらこう叫んだ。 「あんのバカ兄貴ィィ!!!!! にプロポーズとはいい度胸アルなァァァ!!!!!」 目から火を出して怒り狂う神楽を必死で取り押さえる新八とに、 向かいに座っていた俺とオッサンは顔を見合わせてお互い溜息をついた。 どうやらこのオッサンが戦いに来たんじゃないって事は分かってくれたらしいが、 怒りの矛先が完全にあのバカに向いてしまったようだ。 まぁ神楽はを実の母親のように慕ってるし、 そのをあのアホ兄貴に横取りされたくないっていう気持ちも分からんでもない。 『神楽ちゃん!ちょっと落ち着いて!』 「!!私はあのバカ兄貴と結婚なんて許さないネ!!」 『分かってる!安心して結婚する気なんかないから!』 「神楽ちゃん!ここは一旦落ち着こう!大人になろう!」 「大人になろうって何アルか!? と兄貴に不純な関係になれってことアルかあぁん!?」 「違う神楽ちゃん!!色々と違う!!」 暴走する神楽を必死で止めると新八を眺めながら、 俺とオッサンはズズズと平和に茶をすすった。大人ってコレだから嫌いアル!
(オッサン、お前のせいだぞ。どうにかしろよ) (俺のせいじゃねぇよ。団長のせいだ) (言ってる場合ですか!!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ あらイヤだ!大人って不純だわ!← ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/11/03 管理人:かほ