しょうせつ

俺はを連れ去ろうとする沖田君の首根っこを掴んで多串に向かって突き出した。
すると多串と沖田君はキッと睨み合い、
しばらくしてから多串君が俺の方を見て嫌そうに口を開いた。

「いきなりを連れて行こうとしたコイツの行動は悪かった。
 だがこっちも迷惑してんだよ。
 早くを屯所に連れていかねぇと大変な事になる。」
「あぁん!?何わけの分かんねぇ言ってやがる!」
「総悟に聞かなかったのか?
 真選組隊士全員にを連れて来るように命令が出てんだよ。」

多串君は大真面目な顔でそう言った。
そう言えばさっき沖田君も同じような事言ってたな。
沖田君は冗談でそーゆーこと言う子だから嘘だと思ってたけど、
多串君が言うんだったら本当にそーゆー命令が出てんのかもなぁ……。

「何でを屯所に連れて行くんだよ。」
「テメー等には関係ねぇよ。とにかく借りるぞ。」
「オイ待てコノヤロー!関係ねぇわけねーだろ!!
 はウチの社員だぞ!引き抜きは社長の俺を通してもらおうか!」
「引き抜きじゃねーよ!!いいからよこせ!!」
「誰がテメーなんかにウチのを渡すか!!」
「んっだとゴルァ!!!!」

執拗にを連れて行こうとする多串君の胸倉を掴むと、
多串君も俺の胸倉を掴んできてそのまま口喧嘩に発展した。
近くに居た沖田君と、そして神楽と新八は
「あーあ」と言いたげな表情で俺たちの喧嘩を見ている。

まぁ別にを屯所に連れて行くくらいはいいんだけどね、
銀さんもそこまで鬼じゃないし、心が太平洋並みに広いわけだし?
でもここで引き下がったら、なんか負けた気がする。
いや、別に下らない意地張ってるとかそんなんじゃなくて、
理由も教えずにを連れて行くなんて言語道断っつーわけだよ。
いやホントだから。別に意地張ってるとかじゃないから!

『ちょっと2人とも落ち着きなさい!!
 土方さん!アンタ総悟のお迎えに来たんじゃないの!?
 喧嘩してないで早くこのドS連れて帰ってよ!』
「テメー、俺がこんなニコ中に迎えに来てもらわなきゃ
 自分家にも帰れねェようなガキだとでも思ってんのか。」
「十分見えるネ。私に比べればまだまだお子ちゃまアル。」
「んだとチャイナァ。」
「あぁん?やんのかサド野郎。」
『もー!!2人とも止めなさい!!』

俺と多串君、そして沖田君と神楽が一触即発状態になっているところに、
とうとうがイライラしたようにそう怒鳴りつけた。
手にはまだ手錠がかかっているから殴りかかっては来なかったけど、
アレがなかったら絶対に4人とも殴られてたな。
沖田君のおかげで助かったが、
俺たちを巻き込んだのも紛う事なき沖田君なので礼は言わない事にする。

『ってゆーかアタシ悪い事何もしてないのに
 何で屯所に連れて行かれなきゃなんないの!?』
「お前を探してる迷惑な奴が屯所に居るんだよ。
 先日町で攘夷浪士に絡まれてソイツ等を返り討ちにしてた野郎なんだが、
 事情聴取するっつってんのにを連れて来いの一点張りだ。
 いい加減俺たちも仕事にならねーから、お前を探しに来たんだよ。」

多串君の言葉に、俺たちは一斉に顔を見合わせた。




迷惑兄さん捜索終了

(あのバカ……寄りにも寄って真選組に捕まってるなんて……) (ちょ、阿伏兎さん、あんまり落ち込まないで下さいよ) (そーだぜ、見つかって良かったじゃねぇか) (思いっきり敵陣で見つかったけどね) (やっぱりバカ兄貴アル) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ やっと迷惑兄さんが登場の兆し。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/11/06 管理人:かほ