『銀時ー?神威ー?もう朝だよ?さっさと起きなさい!』 聞きなれない声が俺を夢の世界から引きずり出した。 いつもの阿伏兎の不機嫌な声じゃなくて、可愛らしい高い声。 そう、あれはの声だ。いつものように、元気で明るいの声。 起こしに来たのが阿伏兎だったら無視して二度寝をしている所だけど、 に起こされたとなると、無視するわけにはいかないな。 俺はまだ寝ぼけている頭をフル回転させ、状況を把握する。 隣の布団では銀さんが「ん゛ん゛ー」と呻き声をあげながら布団に包まっていた。 そうか、昨日銀さんたちが俺を迎えに来て、 俺が地球に残るって言ったら、阿伏兎が珍しく許してくれたんだ。 ボーっとする頭でそこまで考えて、俺は布団に丸まった。 駄目だ、やっぱり眠いから二度寝しよう。 早起きなんてしたことないから、いくらが起こしに来たって出来ないや。 そもそも俺夜兎族だし。夜が活動時間で、朝はだいたい寝てるし。 『もぉー!2人とも聞こえてんの!?朝だっつってんでしょーが!』 「うるせーよ、聞こえてるっつの……だからもう少し寝かせろ。」 『もう少しってどれくらいよ!?』 「あと30分……。」 『もー、しょうがないなー。あと30分だけだからね?』 はそう言うと、襖を閉めて行ってしまった。 俺はウトウトしながらそんなの声を聞いていた。 声だけでも顔がハッキリと分かる。 は自分の感情を隠すのが下手だから、声色だけで表情が読み取れる。 昨日だって、俺が万事屋に居座るって言った時、 言葉では嫌がっていたくせに、顔は真っ赤になっていた。 きっと本当に嫌がっていたんだろうけど、その反面照れているのが丸分かりだ。 そんなを俺は改めて可愛いと思った。 可愛いなんて概念、自分でも持ち合わせていないだろうと思っていたけど、 を目の前にしたら今まで感じなかった感情がたくさん溢れてくる。 これが本当に愛と呼べるものなのかはまだ分からないけど、 少なくとも、俺にとっては大切な存在だ。 「ー、おはよーアリュー。」 『おはよう神楽ちゃん。ほら、起きたんなら顔洗っておいで。』 向こうの部屋からと神楽の声が聞こえてきた。 神楽の声はとても眠たそうで、今襲いかかったら一発で死にそうなくらい無防備だ。 俺はまた眠ろうとしている頭で昨日の事を思い出していた。 俺が銀さんとに連れられてここに来た時、 ここで2人を待っていた神楽と、もう一人、アレ誰だっけ? 名前は忘れたけど、眼鏡かけて地味な奴。 そいつと神楽が俺の姿を見て絶句した。 「なッ……!?ぎ、銀さん!!その人……!!」 「何でお前がここに居るネ!!!」 吉原で阿伏兎が散々虐めたらしいから、俺達のことが相当嫌いだったんだろう。 2人はギャーギャーと騒ぎ出し、それを銀さんとが必死で宥めていた。 『ちょ、気持ちは分かるけど2人ともちょっと落ち着いて!』 「僕は別にいいですけど……その、大丈夫なんですか?」 「大丈夫なわけねーだろダ眼鏡!!!吉原での事忘れたアルか!!!」 「分かった!お前等の気持ちはよーく分かった! でもあのオッサンがコイツを迎えに来るまでの辛抱だから!な!?」 俺に飛び掛ろうと暴れまわる神楽を、銀さんは必死で押さえ込んでいた。 しかし神楽も一応夜兎族だ。 銀さんが力で敵うはずもなく、もう少しで神楽が俺に襲い掛かって来そうだ。 まぁこんな反応は予想の範疇だったし、 神楽のせいでと一緒に居られなくなるのはかなり腹が立つ。 みんなの前で宣言もしちゃったし、ここは俺が大人にならないとね。 「神楽。」 「あぁん!?何アルか!?」 「仲直りしようか。」 俺のその言葉に、その場に居た全員が目を真ん丸く見開いた。 「俺はただと一緒に居たいだけなんだ。 お前と喧嘩するために万事屋に来たわけじゃない。」 「な、何アルかそれ……。」 俺の言葉に、神楽は顔を真っ赤にしてモジモジし始めた。 何コイツ、気持ち悪い。 俺は初めて見る神楽の姿に、ちょっとだけ顔を歪ませた。 「……まぁ、そーゆーことだ。まだ異論がある奴は?」 そう言った銀さんは嬉しそうに笑っていた。 隣に居たも俺の方を見てにっこりと微笑んでいた。 もしかして今の発言での好感度が急上昇したんじゃないだろうか。 このまま行けば明日にでもを嫁にして春雨に帰れそうだ。 「かむ……えっと、兄貴……。」 「ん?何?」 俺がを見つめていると、神楽がモジモジしながら俺に話しかけてきた。 「今の言葉……本気アルか?」 「ううん、社交辞令。」 次の瞬間、何故かが思いっきり俺を殴った。正直すぎるバカ兄貴
(痛いじゃないか、何するんだよ) (それはこっちのセリフ!!!!アンタ何考えてんの!?) (俺はのことしか考えてないよ) (全然嬉しくないわよ!!むしろ腹立つ!!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 社交辞令って言うのかなコレ。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/11/23 管理人:かほ