しょうせつ

俺の言葉の何がマズかったのか、
には殴られるわ銀さんと神楽の攻防は再開するわで
万事屋は最初の騒がしさに立ち戻ってしまった。
しかも神楽に至っては最初よりもっと怒っているように見える。

「銀ちゃん放すネ!!!コイツは私が叩きのめすアル!!!!」
「だーもう神楽落ち着け!!
 今のは完全にアイツが悪かった!でも許してやってくれぇぇ!!」
「コイツが居座るのは絶対に反対アルゥゥ!!!!!」

そんな言葉を叫びながら完全に怒り狂っている神楽を、
銀さんと眼鏡がひーひー言いながらなんとか押さえ込んでいた。
そんな3人を滑稽だなぁと思いながら眺めていると、俺はまたに殴られた。

『神威!神楽ちゃんにちゃんと謝って!』
「何で俺が神楽に謝らないといけないんだい?
 そもそも万事屋のリーダーは銀さんだろ?嫌なら出て行けばいいじゃないか。」
「んだとゴルァ!!!!」
『神威!!!』

俺の言葉に、はさらに怒った顔をした。
別に嘘なんかついていない。
俺は本当に社交辞令で神楽に和解を提案したんだ。
だってそうしないとと一緒に居られないじゃないか。
それなのにさっきから神楽もも怒りっぱなしだ。
やっぱり女っていう生き物は扱いづらいなぁと思った。

「うるせぇぇ!!!!!」

俺がこの状況を面倒だと思い始めた瞬間、
いきなり銀さんが大声で叫び、万事屋は静寂に包まれた。
そして銀さんは俺たちをグルリと見渡し、ビシッと決めポーズ付きでこう言い放った。

「万事屋のルールブックは俺だ。」

その言葉に、眼鏡とは「はぁ、」と溜息をついた。
どうやら銀さんの決定にこれ以上反対する事を諦めたらしい。
それはさっきまで怒り狂っていた神楽も同じようで、
しばらく銀さんを不服そうな顔で睨みつけてはいたけれど、
急にフンッとそっぽを向いてそのまま押入れに引き篭もった。

どうやら場の空気が俺を受け入れる方向に向かったようなので、
俺がに向かって「これで心置きなく一緒に居られるね」と話しかけたら、
はちょっと怒ったような顔をして
『ちょっとは反省しろ!』と脳天チョップをかましてきた。
何故殴られたのかは全く分からなかったけど、
とりあえずが怒っていたので言葉は返さなかった。

その後、夜も更けてきたからと言って眼鏡が家に帰り、
もしばらくしてから万事屋の下にある店に帰って行った。
そう言えば、ここには神楽と銀さんしか住んでないとか言ってたっけ。
と一緒に眠れないのは残念だけど、
下の階だったらいつでも夜這いは出来るのでよしとした。

そして銀さんにパジャマを借りて、
一部屋に男2人というなんともむさ苦しい状況で俺は眠りについた。
布団で眠ったのなんて何年振りだろう。
鳳仙の旦那の弟子になってから、ずっとベッドだったからなぁ。

それに、こんなに暖かくて平和な夜は本当に久しぶりだった。
家を飛び出して以来だろうか。
まぁあの時も平和とは言いがたい生活ではあったけど。

そんなこんなで俺は万事屋で初めての夜を過ごし、現在に至るのであった。

『銀時ー?もう30分経ったよ!今度こそ起きなさい!』
「ん゛ん゛〜……あと3時間……。」
『長いわッ!!!!!』

なかなか起きない銀さんに痺れを切らしたが
銀さんの布団の端を掴み、そして思いっきり持ち上げた。
勿論銀さんはゴロゴロと布団から転げ落ち、襖にブチあたって停止する。

「テッメェ何しやがんだ!!!!もうちょっと優しく起こしやがれ!!」

顔面から襖に直撃したらしい銀さんは赤くなった顔を擦りながら、
手際よく銀さんの布団をたたんでいるに向かって怒鳴りつけた。
しかしは相も変わらず涼しい顔で銀さんに言葉を返す。

『優しく起こして起きなかったから乱暴に起こしたんでしょ。』
「てめっ、それが父親に対する態度か!!」
『誰が父親だ誰が!!
 アンタみたいなマダオがお父さんなんてアタシ認めない!』
「んだとこの反抗期!!」
『うるさいニート!!』

寝起きだと言うのに銀さんはとても元気だった。
朝っぱらから俺のと言い争いだ。
そう言えば、って昔銀さんに拾われて銀さんに育ててもらったんだっけ。
親子ってあんまり分からないからはっきり言えないけど、
と銀さんって結構いいコンビだと思う。
勿論、親子としてだけど。

『神威!アンタも起きなさい!』
「んんー……。」

は言いながら俺の布団に近づいてきて、
頭までスッポリと被っていた掛け布団をバサッと剥ぎ取った。
眩しさに俺が一瞬顔を歪めてゆっくりと目を開けると、
そこにはのとても可愛らしい笑顔があった。

『あはは、流石の神威も朝には弱いんだ。変な顔。』

久しぶりの平和すぎる朝に、俺はつられて微笑んだ。




戦いから離れた日常

(おはよう。目覚めのキスでもしてくれるの?) (ばっ、バカ言わないでよ!!さっさと起きろ!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 日常と書いて「アタリマエ」と読む。……はい、水樹さん大好きです。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/11/23 管理人:かほ