「ったくの野郎……だんだん反抗的になってきやがって。 お前は俺のお母さんかっての。いやいや、俺がお父さんだからね!?」 のせいで布団から転がり落ちた俺は 文句を言いながらもいつものように顔を洗いに洗面所へと向かった。 しかし今日は万事屋初心者が居るので説明しながらの洗顔だ。 「ほれ、ここで顔洗って歯ぁ磨くんだよ。分かるよな?」 「俺をバカにしてるの?それくらい知ってるよ。」 触覚バカ、もとい神威は心外だとでも言いたそうな顔でそう言い、 俺の言った通りに洗面所で顔を洗い出した。 俺はその間に歯を磨こうと歯ブラシを取り出す。 コイツの為に新品の歯ブラシを出すのは癪だが仕方がない。 俺は自分の分と、神威の分の歯ブラシを取り出して歯磨きを開始した。 「銀さん、これ毛が柔らかい。俺硬い方が好きなんだけど。」 「文句言うんじゃねーよ。俺は歯ブラシは柔らかい毛派だ。」 「ふぅん……そっか。銀さんもう歳だもんね。」 「んだとコラ。テメーに向かって水吐いてやろうか。」 俺が思いっきり睨んでいるというのに、 神威は涼しい顔で「銀さん汚い」とか言いながら歯を磨き始めた。 吉原で出会ったコイツは掴み所がなくて何となく気持ち悪かったが、 ここに来てからのコイツはただのガキだ。 さっきだって、に起こされて嬉しそうな顔をしてたし、 案外神楽よりもガキなのかもしれねーなぁ。 『銀時ー!神威ー!ご飯できたよー!』 「んー。」 台所で朝飯を作っていたが洗面所に向かってそう叫んできた。 それに俺は歯ブラシをくわえたまま軽く返事をする。 すると同じく歯磨き中の神威が俺の顔を見てこう尋ねてきた。 「ご飯っていつもが作ってるの?」 「んー?時々な。アイツが作ったり、俺が作ったり。」 「銀さん調理作れるの?意外。」 「お前にだけは言われたくねーよ。お前が微笑むとか超意外。」 「あぁ、朝のこと?あれはにつられたんだよ。」 神威はそう言って一旦口をゆすぎ、また会話を再開した。 「って不思議な力を持ってるよね。」 「あぁん?まぁ半分天人だからな。」 「そうじゃなくて、何て言うのかな……一緒に笑っちゃうみたいな。」 口をタオルで拭きながらぼんやりとそう言う神威に、 俺は自分の口をゆすぎながら「はぁ?」と言葉を返した。 「と一緒に居たら俺が俺じゃないみたいで気持ち悪いんだ。」 「安心しろ、それは俺も思ってた。」 「どこが安心出来るんだよ。やっぱり変なんじゃないか、俺。」 「いいんじゃねーの?俺は吉原ん時のお前より、今のお前の方がいいと思うぜ。」 俺は神威からタオルを受け取って口を拭きながらそう言った。 すると神威は驚いた顔をして俺の顔をジッと見つめてくる。 「俺……そんなに違う?」 「あぁ、全然違う。何だよ、嫌なのか?」 「……このままココに居たら、俺は弱くなる一方なんじゃないかな。」 一瞬、神威の目に殺意に似た感情が芽生えたのが感じ取れた。 しかし不思議とそれを怖いなんて思わなかった。 「お前等夜兎族の“強い”っつーのは、腕っ節の強さだけなんだろ?」 「……?それ以外に何があるんだい?」 「お前言ってたよな、侍は面白いって。」 俺がタオルを置きながらそう言うと、神威は静かに頷いた。 「俺たちには腕っ節の強さよりも何よりも、大事にしてるモンがある。」 「それが銀さんやが強い理由?」 「さぁな。でもお前等にはねぇもんだと思うぜ。」 「教えてよ、侍が持ってる強さの秘密。」 神威の目がまるでトランペットを目の前にした少年のような目になっていたので、 俺は内心驚きながらもおかしくて噴き出してしまった。 勿論、俺の反応が理解できない神威はちょっとだけ眉をひそめた。 「心の強さって奴だよ。何かを護るために得るもんだ。 お前もと一緒に居たら分かるんじゃねーの?」 俺はそう言いながら洗面所を後にした。 星海坊主のオッサンが神威の事をボロクソに言ってやがったが、 の前じゃアイツもただのガキだ。 まだまだ更生の余地はあるんじゃねーかと俺は思うけどな。 それこそ、神楽が願っているような、昔の神威ってやつに。純粋な夜兎の更生記
(バカ兄貴!私はまだお前のこと許したわけじゃないネ!) (そんなに俺が嫌なら出て行けばいいだろ?それとも戦る?) (ムッキー!!臨むところネ!!!!) (止めなさい2人とも!!) (……俺の買いかぶりだったのかなぁ……) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 基本的にはシリアス調なんです。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/11/23 管理人:かほ