洗面所から帰ってくるなり勃発した神楽と神威の口喧嘩を 俺とでなんとか阻止し、やっと俺たちは食卓についた。 テーブルの上に並べられたいつもより大分多めの朝食を見て、 俺の隣に座っている神威の顔がちょっとだけ喜んでいるように見えた。 「これ全部が作ったの?」 『ううん。一部は神楽ちゃんが手伝ってくれたの。』 「さすがの手料理、春雨の食堂なんかより遥かに美味しそうだよ。」 『ねぇ聞いてる?神楽ちゃんも手伝ってくれたんだってば。』 「じゃあ、早速食べようかな、の手料理。」 『神威、アンタ分かっててやってるでしょ。』 の話(いやむしろ神楽の存在)を完全にスルーして、神威が嬉しそうにそう言った。 そう言えばすっかり忘れてたけど、コイツって春雨の師団長なんだっけか。 こんな一家庭の食事なんかより、 宇宙海賊春雨で出る食事の方がよっぽど豪華だと思うけどなぁ。 『はい、それじゃあ銀時号令。』 「おー……そいじゃーお前等手ぇ合わせろー。はい、いただきます。」 俺の号令に続いて3人分のいただきますが万事屋に響いた。 そして次の瞬間、大食い兄妹が同時に白米のたっぷり入った桶をグッと持ち上げ、 恐ろしいほどの速度で白米を胃袋に流し込んでいった。 『さ、流石は兄妹……食べ方も似てるね……。』 「似てるっつーかコイツ等バカだろバカ。大食いバカだろ。」 『あっ、ほら銀時。早く食べないとおかず無くなっちゃうよ。』 神楽だけでも食卓は戦場だっつーのに、 そこにとんでもないラスボスが登場してしまったようだ。 さっきから目には見えないが、神威と神楽の箸が火花を散らしている。 おいおい勘弁してくれよ。何で飯食ってるだけなのに火花が散るんだよ。 「バカ兄貴!!ちょっとは遠慮するアル!!」 「何で俺がお前相手に遠慮しなきゃいけないの?」 「新入りが先輩に遠慮するのは当然アル!」 「じゃあ俺に遠慮しなよ。俺はお前の兄貴なんだから。」 「ムッキー!!やっぱりムカつくネ!!」 食卓上で繰り広げられている(と思われる)戦いに、俺とは呆気にとられた。 神楽と神威の持っている箸が全く見えないのは何でだろうか。 飛び散る火花と共に、あれだけたくさんあったおかずが どんどん無くなっていくのは何でなんだろうか。 ホント何コレ、超常現象? 『ちょっと2人とも!もっと落ち着いて食べなさい!!』 「神楽、あんまり食べ過ぎると太るよ。」 「お前こそ太ってに嫌われるがいいネ!!!!」 「いい加減にしろォォ!!俺達が食えねぇだろーが!!」 俺の声も虚しく、夜兎兄妹の朝飯争奪戦は止まらなかった。 ガツガツと尋常じゃないスピードで山盛りの飯を平らげていく2人に、 俺とは徐に顔を見合わせ、それから深い深い溜息をついた。 『銀時、何食べたい?』 「甘い玉子焼き。」 『……まぁいいか。作ってきてあげる。』 はそう言うと溜息をつきながら立ち上がり、台所へと向かった。 そもそもコイツ等と一緒の食卓を囲むなんてのが自殺行為だったんだ。 特に今は神威が居るせいで神楽が興奮してるからなぁ……。 すぐ喧嘩になっちまうし、こりゃ何かしらの対策をたてねーと。 俺がそんな事を考えながら溜息をついた時、カランッと気前のいい音がした。 どうやら食卓の上にあった大量の食料が姿を消し、 大食いバカ共が箸を置いたようだ。 「ごちそうさまでした。……あれ?は?」 食い終わった神威がキョロキョロと辺りを見回した。 その向かいでは神楽が女子あるまじき腹でゲップをしていた。 「なら台所で飯作ってる。テメー等のせいで俺の分がなくなったからな!」 「銀さん専用のご飯を?」 「そうだよ。謝る気になったか?」 俺が神威を睨むと、神威は俺の言葉を完全にスルーして「ふーん」とだけ呟いた。 そこにが特大の玉子焼きを皿の上に乗っけてやってくる。 『砂糖で作ってあげたから、さらに砂糖かけちゃ駄目だよ。』 はそう言ってテーブルの横から俺の前に皿を置いた。 次の瞬間、神威がの腕をガシッと掴み、勢いよく自分の方に引き寄せる。 『うわぁ!?』 いきなりの事にはバランスを崩し、あっさりと神威の腕の中へ。 これには「何それ6つ子?」と聞きたくなるような腹をした神楽も、 そして隣に座っていた俺も心底驚いた。 『なッ……!?』 「俺の目の前で銀さんとイチャイチャしないでよ。襲っちゃうぞ。」 『え!?何!?何それ何!?』 「は俺の嫁なんだから、他の男に尽くすのは禁止だよ。」 『はぁぁ!?何それ!?付き合ってもないのに何この独占欲!!!!!』 は顔を真っ赤にして何とか神威の腕から逃れようとジタバタしていたが、 純粋な夜兎族である神威には力で敵わないのか、状況は一向に改善されなかった。 それどころか、向かいに座っていたはずの神楽ちゃんが 何故か頭上にソファを持ち上げて顔を真っ赤にしていた。 ……あれれ、神楽ちゃん何してるの? 「こんのバカ兄貴……!!!!に何してるネェェェ!!!!!!」 「ぎゃあぁぁ!?神楽ちゃんそれアウトォォォ!!!!!」 言わずもがな、食卓と俺たち全員が被害を被った。だってソファって大きいんだもん
(神楽テメェェ!!!!周りを見やがれ!!) (ムガァァ!!!!!) (神楽ちゃん落ち着いてぇぇ!!) (全く、神楽は破壊神だね) ((お前が言うな!!!)) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 喧嘩しつつも仲がいい、みたいな。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/11/23 管理人:かほ