『2人ともよーく聞きなさいよ。 ウチの食卓はゆっくり食べる、たくさん噛んで食べるが約束なの。 もしまた今日みたいな食べ方したらゲンコツお見舞いするからね!!』 そう言いながらグッとゲンコツを作るは、 まるで反抗期の子供に説教する母親のようだった。 そんなの前には頭にでっかいタンコブを作った神楽と神威が正座している。 「もうゲンコツされてるアル……。」 「は容赦ないなぁ……。」 『2人が悪いんでしょ!特に神楽ちゃんはウチに来た時に一回注意してるでしょ!』 「だって……。」 神楽は拗ねたような顔をしながら隣で同じく正座している神威の顔を見た。 神威はと言うと、眉をハの字にしながらもニコニコしながらを見つめていた。 そんな2人の様子に、は『はぁ、』と軽く溜息をついて言葉を続ける。 『とにかく、次からは2人とも気をつけてよ?いい?』 「「……はーい。」」 が促すと、2人は同時に返事をした。 神威の声は少し不服そうだったが、流石に惚れた女には敵わなかったらしい。 これがあの吉原で散々大暴れしていた春雨の団長だというのだから、 世の中何があるか分かったもんじゃない。 正座してるし、説教されてるし、素直に返事してるし。 本当にコイツあの神威と同一人物か? 『じゃあ、食後のお茶でも飲もっか。神楽ちゃん手伝って。』 2人が十分に反省したと判断したは にっこりと微笑んでいつものような明るい声でそう言った。 それに神楽がちょっと喜んだ顔をして、 「分かったアル」と返事をしながらと一緒に台所へと向かう。 「はやっぱり面白いや。この俺に正座させた挙句、説教するなんてさ。」 しばらくの後姿を眺めていた神威だったが、 急に笑顔になったと思ったら、そんな事を言いながら俺の隣に腰掛けた。 「なんだよテメー、喜んでんじゃねぇか。Mかテメーは。」 「まさか。俺は自他共に認めるドSだよ。」 「真似すんじゃねーよ。ドSだったら俺とキャラ被るだろーが。」 「全然被らないよ。だって俺ニートじゃないし。」 「俺だってニートじゃねぇよ!!!!ブン殴るぞ!!!!」 俺が怒鳴ると、神威はキョトンとした顔で俺を見た。 「あれ?銀さんニートじゃないの?」 「バッカお前、んな不名誉なモンじゃねーよ!万事屋だよ万事屋!」 「万事屋?」 小首をかしげながら神威が俺に尋ねる。 「簡単に言えば何でも屋だ。どんな依頼でも引き受けるんだよ。」 「へぇ、春雨と似たようなモンだね。」 「一緒にするんじゃねーよ!俺たちの仕事はもっと健全だ!」 「例えば?」 神威の言葉に、俺はウッと言葉を詰まらせた。 改めて考えると、俺たちに依頼された正式な仕事にはろくなもんがない。 色々厄介ごとに首を突っ込んではいるが、 全部勝手に首を突っ込んだり巻き込まれたりしただけで、依頼されたわけじゃない。 もしかして俺たち、かなり大損してる? 「……た、例えば、行方不明になったニャーと鳴く生物の保護とか……。」 「迷子の猫探し?」 「あと……大量の団子を胃袋の中に隠して守りきる仕事とか……。」 「タダ飯?」 「あとは……幽霊という存在になり人々の肝を冷やし尽くす仕事とか……。」 「お化け屋敷の手伝い?なんだ、下らない仕事ばっかりじゃないか。」 俺が出来るだけカッコよく聞こえるように試行錯誤しているというのに、 神威はそんな俺の努力をことごとく無駄にして、 最後には拍子抜けだとでも言いたそうな声を出した。 「うるせーな!!一番身近なみんなの頼れる銀さんなんだよ!!」 「じゃあ銀さん、を俺に頂戴。」 「テメーそれ依頼じゃなくてただの欲望だろーが!!」 笑顔で言い放った神威に、俺は脳天チョップをお見舞いした。それはまるで親子のようで
(何アレ……漫才の練習?) (、放っておくネ。男なんてみんなバカ野郎アル) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 平和な万事屋が大好きです! ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/11/23 管理人:かほ