しょうせつ

の提案で、俺たちは手分けして家の掃除を行っていた。
事務所は神楽が掃除機をかけてるから、俺と神威は居間の片付け中。
っつっても、散らかってるものを押入れに詰め込むだけの単純な作業だ。
掃除という名の詰め込み作業はものの数分で終わってしまった。

「おーい!片付け終わったぞー!」

俺は襖から顔を出して洗い物をしているに声をかけた。
するとは『えぇっ?』と驚いたような声を出し、
一旦作業を中断して廊下に出てきた。

『もう終わったの?どーせ押入れにもの詰め込んだだけなんでしょ!』
「しゃーねーだろ!他にやることがねぇんだよ!」
『いっぱいあるわよ!ジャンプ片付けるとか!』
「バカかテメーは!ジャンプはまた読み返すだろ!」
『あーはいはい!分かりましたよ!じゃあ窓拭いて窓!』

俺の言葉に、は呆れたようにそう言って台所に戻って行った。
俺は神威に声をかけて物置から雑巾を取り出し、
言われた通り居間にある障子窓を拭く作業に取り掛かった。

「俺、生まれてこのかた掃除なんてしたの初めてだよ。」

雑巾片手に窓を見つめる神威に、俺は目線は窓のまま言葉を返した。

「だろーな。お前が家事やってるとこなんて想像出来ねぇよ。」
「俺にこんなコトさせるなんて、やっぱりは面白いや。」
「何笑ってんだよ。やっぱお前Mだろ。ドMなんだろ。」
「だから俺はドSだって何度言わせれば気が済むんだよ。」

そんな下らない会話をしているうちに、俺は作業を終わらせた。
こんな小さい窓一つ拭くのにそんなに時間がかかるわけがない。
最初はさっさと掃除なんて終わらせてジャンプでも読もうかと思っていたが、
いざ掃除を始めると、すぐに作業が終わってしまうと何となく物足りない気がする。

俺はあまり汚れていない雑巾を片手に軽く溜息をつき、
そろそろ事務所の方に取り掛かるか、と神威に声をかけようとして停止した。
神威はまだ雑巾片手に窓を見つめている。
え?何で?何でコイツそんなに熱心に窓を見つめてんの?
さっきから微動だにしない神威に、俺はそっと声をかけた。

「オイ神威、お前何してんの?」
「力加減がよく分からないんだ。」
「はぁ?力加減?」

予想外の返答に、俺は呆れた声を出した。

「んなもん適当でいいんだよ。障子を突き破らねぇ程度で。」
「優しくってこと?」
「そうそう、優しく。んなゴチャゴチャ考えなくてもいいって。」

俺の言葉に、神威は雑巾をやっと窓にあて、そしてそのまま障子を突き破った。何でだァァァ!!!!!
 俺優しくて言ったよね!?障子を突き破らねぇようにって言ったよね!?」
「だから優しく相手をいたぶる程度の力でやったんだけど。」
「いたぶってどうすんだ!!!!お前障子に何か恨みでもあんの!?」

とことん常識がないらしい神威の行動に、俺は力の限りツッコんだ。
何だコイツ、バカなの?頭悪いの?
天は二物を与えずとはまさにこのことだ。
コイツ顔も結構いいし腕っ節も相当強いが、
日常生活となるととんだ落ちこぼれじゃねーか!

「銀ちゃん?どうしたアルか?」

掃除機をかけ終わった神楽が俺の叫び声に首を傾げながら居間に入ってきた。

「神楽!テメーの兄貴とんだバカ兄貴じゃねーか!どうすんだコレ!」
「何アルか?お前掃除もロクに出来ないアルか?
 そんなんでと結婚できると思ったら大間違いネ。」

神楽は蔑んだ目で神威を睨みながらそう言った。
それにカチンときたのか、神威は笑顔のままで、
しかし機嫌が悪そうな声で神楽に言葉を返す。

「お前に言われる筋合いはないよ。悪いけど、は絶対に俺の嫁にするから。」
「は誰にもやらないネ。私が認めた男にしか指一本触れさせないアル。」
「へぇ、言うね。やってみせてよ。」
「上等ネ。かかって来いヨ。」

神威が殺意を顕わにし、神楽が掃除機を放り投げた瞬間、
襖のところからの怒鳴り声が聞こえてきた。

『コラ!!2人とも何してるの!?喧嘩は止めなさい!!』

急に聞こえてきたその声に兄妹は驚いての方を見た。
は腰に手を当てて仁王立ちというなんともお決まりのポーズで、
怒った顔をしながら兄妹を見つめている。
そんなの様子に、兄妹はお互いに一度だけ目を合わせ、
同時にフン、とそっぽを向いた。

コイツ等俺に対しては反抗的なのに
の言うことだけは素直に聞くんだよなぁ……。
家ん中で一番肩身が狭いのは父親だとよく言うが、
俺は今その教訓を身をもって実感している。
どうしよう……今この家で一番権力がないのは俺なのかもしれない。

『銀時も、一緒に居たんなら止めてよね!』
「あぁ?」

俺が今後の万事屋における自分の地位について考えていた時、
が視線を兄妹から俺に移し、怒ったようにそう言った。

「だってこのバカ野郎が……。」
「人を気安く指差さないでよ。」

俺がに反論するために神威を指差しながら言葉を発したら、
何故か指を差されたことに腹を立てた神威が
何の迷いもなしに笑顔で俺の指をボキッとあらぬ方向へと折り曲げた。




響き渡る断末魔

(ぎゃあぁぁぁ!!!!!) (きゃあぁぁ!?銀時ー!?) (神威ィィ!!お前何するネ!!!!) (てへっ☆) (「てへっ☆」じゃねぇぇぇ!!!!!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 銀ちゃんと神威が本物の親子みたいでなんか可愛い。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2011/03/27 管理人:かほ