しょうせつ
グォルァァァ!!!!!!テメェ聞いてんのかああぁぁんん!?」
「あのねぇ、こっちだって金金って言いたくないんですよ。
 でもね、返さない方が悪いんでしょ?えぇ?そうでしょうよ。」
「お父さん、ここは一丁指でも詰めてもらわないと。」

万事屋に来た人たちよりももっとアレな顔をした人たちが、
いたる所で一般市民相手にそんな言葉を口にしていた。
まるで仁侠映画のワンシーンでも見ているかのようなその光景に、
僕と銀さんとさんはお互いに身を寄せ合って震えるしかなかった。

万事屋で社長さんの依頼を正式に受けたあと、
黒塗りのリムジンとおっかない顔の運転手に連れられて
僕たちは早速社長さんの護衛をしながら本社へとやって来た。
本社へやって来るまでの道のりで特に敵襲もなかったし、
黒スーツさん達の顔も見慣れてしまっていたので
僕は調子に乗ってちょっと気を緩めていたのかもしれない。

しかし、そんな僕の気の緩みに喝を入れるかのように、
結構まともな会社の中に足を踏み入れた瞬間、先ほどの光景だ。
万事屋に来る前はヤクザの用心棒をしていた神楽ちゃんや
もっとおっかない所で生活をしているお兄さんは全く動じていなかったけど、
比較的普通の人生を送っている僕たちにはちょっと刺激が強すぎると思います。

『ぎ、銀時……これ何かの撮影かな?』
「バッカお前アレだよ、ツンデレ集団だよ。
 口ではあんな事言ってるけど実はアイツ等超イイ人だから。」
「いや、そんなわけないでしょ。完全に金巻き上げてますよあの人たち。」

僕たちのそんな会話に、社長さんはケラケラと笑った。

「そんなに怖がらなくても、アンタ等には指一本触れさせやしねぇよ。
 ただそこら辺に死体が転がってるかもしれねぇから気ぃつけてな。」

社長さんはとんでもなく怖い事をさらっと言い放ち、
僕たちをエレベーターへと招きいれた。

『わぁー!すごーい!!ひろーい!』

エレベーターでこのビルの最上階に到着すると、
そこはとても広々とした社長室だった。
部屋の中央にはとても高そうな接待用のソファーとテーブルが置かれており、
部屋の奥には社長専用のテーブルが置いてあった。
そのテーブルの向こう側は全面ガラス張りの窓になっていて、
江戸中が見渡せる絶景が映し出されていた。

「流石は社長さん、規模が違いますね、規模が。」
「下であんな地獄が広がってるのが嘘みてぇだな。」

僕と銀さんは言いながらゆっくりと社長室の奥へと足を運んだ。
さんと神楽ちゃんは部屋に入った瞬間
ガラス張りの窓にへばり付いて外の景色を眺めていた。
女子高生の如くキャッキャッと言っている2人の後ろには、
普段より優しい笑顔を携えたお兄さんがさんを見つめていた。

「俺は基本的にこの部屋に居る。
 だからアンタ等は適当に俺を護っておいてくれ。」

社長さんはそう言いながら部屋の奥にある社長机に腰掛けた。
やっぱりこの社長さんは色々と適当な性格らしい。
よく言えば大らか、悪く言えば大雑把。
まるでどこぞの黒い毛玉さんみたいだと、僕はこっそり苦笑いした。
社長になる人というのはみんなこんな性格なんだろうか。

「オッケイ社長、後は俺たちに任せな。」

銀さんはそう言うとパンパンと手を叩いて全員を招集した。
集まった皆は適当に接待用のソファーに腰掛け、銀さんの言葉を待った。
ちなみに、適当とは言ったものの、
さんの隣は言わずもがなお兄さんがキープしていた。

「まずはテメェの意見を聞こう。
 春雨なら殺したい奴が居る場合どういう風に攻め込む?」

銀さんが真面目な顔でお兄さんに尋ねると、
お兄さんはいつもの笑顔で「さぁ?」とだけ答えた。

「さぁってなんだよさぁって。」
「俺は今まで春雨の方針に従ったことはないからね。
 奴等がどうするかなんて分かんないよ。
 俺なら真正面から攻め込んでさっさとターゲットを殺すけど。」

お兄さんの言葉に、銀さんが大きな大きな溜息を吐いた。

「結局テメェ何の役にも立たねーじゃねぇか。」
「まぁまぁ銀さん、お兄さんが戦力になるのは変わりないですから。」

僕がそうフォローすると、お兄さんがすかさず
「俺は君たちには加勢しないからね」と釘を刺してきた。
本当にこの人はさんのためにしか動かないんだな……。
僕と銀さんはお兄さんを注意するさんと、
相変わらずの笑顔でさんの話を受け流しているお兄さんを眺めながら、
お互いに顔を見合わせて「はぁぁ」と大きな溜息をついた。




動かしにくい雷槍

(神威!アタシだけじゃなくて万事屋のみんなも護ってあげて!) (嫌だよ面倒くさい。俺はさえ居ればそれでいい) (まっ、またそういうバカな事言う!バーカバーカ!!) (、顔が真っ赤アルよ) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 黒い毛玉さんは完全に趣味です。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2011/03/30 管理人:かほ