しょうせつ
!チョコレートの作り方教ろッス!!」

そんなまた子ちゃんの言葉で、
私は予定していなかったバレンタインチョコを作る羽目になってしまったのだった。





 

【鬼兵隊のバレンタインデー】

!!チョコが焦げたッス!」 『また子ちゃん湯銭んん!!!!直接鍋に入れちゃ駄目だって!!』 「!!そろばんどこッスか?」 『それを一体何に使う気!?』 「そろばんで型を取るッス!」 『んなもんで型が取れるかァァァ!!!!!』 「!早速北極に行くッスよ!」 『冷凍庫で十分んんん!!!!!!』 『ゼー、ハー、ゼー、ハー……。』 「チョコレート作るだけで息を切らしてるようじゃ、まだまだッスね。」 『だ、誰のせいだと……。』 波乱万丈のチョコレート作りを終え、 私とまた子ちゃんは食堂で一息ついていた。 まさかまた子ちゃんがここまで料理出来ないなんて思ってもみなかった。 確かに、毎日ご飯作るのは下っ端だし、 お菓子なんて女の子らしいもの作る機会なんてないし、 当然といえば当然なんだろうけど……。 「早く固まんないッスかねぇー。」 『あ、あと30分くらいで固まると思うけど……。』 「じゃあ30分後に晋助様に渡しに行くッス!」 『いってらっしゃい……。』 元気に意気込むまた子ちゃんの前で、私は疲労困憊で机に突っ伏していた。 また子ちゃん、器用だから言ったら出来るけど、 私の話ちゃんと聞いてくれないんだよなぁ……。 『はぁ……。』 私は今日何度目か分からないため息をついた。 「おや?さんにまた子さんじゃないですか。」 「あれ、武市変態に万斉じゃないッスか。」 私の記憶上、喋ってるとこなんてあんまり見たことないこの2人が、 なぜか仲良く隣に並んで食堂に入ってきた。 それにまた子ちゃんが驚いた声を出す。 『2人が一緒に居るなんて珍しいね。どしたの?』 私も意外な組み合わせに驚き、そう尋ねた。 すると万斉がおもむろに私の隣に座り、 いきなり私の両手を握って顔を近づけてきた。 思わず反射的に顔を遠ざける私。 『ちょ、近い!!』 「、拙者に何か渡すものはないでござるか?」 『あ、あぁ……チョコ目当てか。』 どうやら武市さんも同じ目的らしく、 また子ちゃんの隣によっこいせと腰掛けて私の方をガン見してきた。 「また子さんのは要りませんが、さんのはぜひ欲しい。」 「んだとコラ。喧嘩売ってんスか?」 「とんでもない。私フェミニストですから。」 「あたしも女だっつーの!!!!」 武市さんを睨みながらまた子ちゃんが胸倉を掴んだ。 それに武市さんは超嫌そうな顔をする。 万斉はと言うと、まだ私の手を離そうとせず、 それどころかジワジワとこっちににじり寄って来る。 『ば、万斉、近い……。』 「拙者と殿の間に距離など必要ござらん。」 『え、何?どういうこと?もしかして万斉って電波?』 「殿に愛の電波なら発信しているでござる。」 『痛い。なんか痛い。』 ジワジワと寄ってくる万斉を一生懸命避ける私。 でもそろそろ体勢的に限界で私が冷や汗をかき始めた時、 ガンッという快活な音と共に万斉の頭が何者かによって叩かれた。 「晋助様!」 また子ちゃんの嬉しそうな声に私が顔を上げれば、 そこには超不機嫌そうな顔をした晋助の姿。 しかも心なしか私睨まれてる。 え?何?私何かした? 「万斉、離れろ。」 「晋助……お主も殿のチョコ狙いでござるか?」 「下らねぇこと言ってんじゃねーよ。いいからから離れろ。」 晋助の言葉に、万斉が渋々ではあるが、やっと私から離れてくれた。 私はほっと一息ついて、隣に腰掛けた晋助にありがとうとお礼を言う。 晋助が私の隣に腰掛けたことに腹を立てたまた子ちゃんが 私の方をめちゃくちゃ怖い形相で睨んできてるけど、 私はあえてそれに気づかない振りをした。 でもチクチク刺さる視線に冷や汗が止まらない。(何でアタシの隣なんだ晋助……) 「甘いもんが食いてぇ。」 『は?』 「甘いもんだよ。さっさと出せ。」 頬杖をついている晋助が急にそんなことを言い出した。 私は一瞬何を要求されているのか分からなかったが、 また子ちゃんは待ってましたと言わんばかりに立ち上がり、 「今持って来るッス!」と言って料理場の方へ走って行ってしまった。 その様子に私もようやくチョコをくれと言われていることに気づき、 じゃあ取ってくるよと3人に言って冷蔵庫へと向かった。 「晋助様!どうぞ食べて下さいッス!」 また子ちゃんが嬉しそうにさっき作ったチョコケーキを晋助の前に差し出した。 その異常な大きさに晋助と万斉と武市さんが苦い顔をしたけど、 また子ちゃんは相変わらずニコニコと笑っている。 「…………5人で食うぞ。」 「えぇ!?コイツ等にも分けるんスか!?」 「いや、拙者は遠慮しておくでござる……。」 「ゴチャゴチャ言うな。また子、皿取って来い皿。あとフォークも。」 「は、はいッス!」 晋助の言葉にまた子ちゃんは人数分の小皿とフォークを取りに行った。 私はだいたい予想していた光景に苦笑する。 『あ、そうだ。これはアタシからね。』 そう言って私は机の上に1つの箱を置いて蓋を開けた。 中には丸くて小さな生チョコがいくつも入っている。 『また子ちゃんのケーキもあるし、皆で食べよっか。』 私がそう言うと、3人が一斉に肩を落とした。 「今年もさんの本命はなしですか……。」 「仕方がない、来年に期待するでござる。」 「…………。」 『……?皆どしたの?』 私が尋ねた瞬間また子ちゃんが帰ってきたので誰も答えてくれなかったけど、 今年は仲良く5人でチョコレートを食べることが出来ました。

テロリスト達のブレイクタイム

(……また子、お前これ何入れた?) (流石晋助様!気づいたッスか?晋助様の好きな羊羹を入れてみたッス!) (通りでこんな……ウプ) (うわ!武市さん大丈夫!?) (これは中々の兵器でござるな……) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ ウチの鬼兵隊はアットホーム! ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/02/15 管理人:かほ