しょうせつ
、今日一日は俺を好きにしてもいいぜ?」
『は?』

それはある日の朝食での出来事だった。
私とまた子ちゃんがいつものように一緒にご飯を食べていると、
寝起きなのかいつもの女用の着物じゃなくて
地味な着流しを着ている晋助が私の隣にドカッと座り、
そして、いきなり今の台詞だ。

正直言うと、晋助が私にそんな事を言ってくると
また子ちゃんがものっそい殺意のこもった目で私を睨んでくるので、
あんまりそーゆー事言うの止めてほしいんだけどな……。
でも、そんな事言ったら面倒な事になりそうなので口には出さないけど。

『いや、別にいいけど。』
「何でだよ。俺のどこが不満なんだ。」
『不満って言うか……そもそも何でいきなりそんな事を。』
「だって今日はホワイトデーだろーが。」
『あぁ、そういえば……。』

私は今日の朝っぱらから私の寝室に勝手に入り込んで
あろう事か勝手に服を脱ぎ始めた変態を2人ほど殴り倒したことを思い出した。
あの時はいつものセクハラの延長線かと思ったけど、
アイツ等あれお返しのつもりだったんだな……。(いや、お返しになってないけど)

「晋助様ァ!!あたしも晋助様にチョコレートケーキ渡したッスよ!?」
「お前……あれはケーキっつーより兵器だったろーが……。」
『あっはは!上手いこと言うね晋助!』
「笑うなッス!!」

晋助のダジャレ(本人的にはどうか知らないけど)がツボった私は
また子ちゃんの前だというのに大声で笑ってしまった。
それにまた子ちゃんは激怒する。
でも最初に言い出した晋助には何も言わないなんて、
これは列記とした差別なんじゃないだろうか。(まぁ分かってたけど)

『アタシはいいよ、お返しなんて。また子ちゃんにあげれば?』
「ほら!もそう言ってるッス!」
「あのなぁ……。」

嬉しそうな顔をするまた子ちゃんとは対照的に、
晋助は私のほうを向いて何か言いたそうな顔をした。
そして何かを言おうと口を開いた瞬間、
晋助の後ろから見慣れた顔が2つ、ニョキッと生えてきた。

『Σぬわぁぁ!?』
「ばっ、万斉に変態!!!!脅かすなッス!!!!」
「衝撃的な登場の仕方だったでしょう?私フェミニストですからね。」
「フェミニスト全然関係ねーだろこの変態!!!!」
「殿、なぜ拙者のお返しを受け取ってくれぬでござるか!」
『いや、アンタ等のお返しで得するのはアンタ等だろーが。』
「とんでもござらん!殿は拙者との子宝に恵まれるでござる!」
『だからそれお前が得するだけだろーが!!!』

突然変な登場をしたかと思えば、
やっぱりとことん変態だった万斉と武市さん。
また子ちゃんと私で変態ボケ(鬼兵隊内での新しいジャンル)に対応するけど、
正真正銘のド変態には普通のツッコミじゃ全然歯が立たない。

すると今まで黙り込んでいた晋助がいきなり立ち上がり、
私に迫ってきていた万斉だけを刀で斬りつけた。
万斉は反射神経がいいからなんとかその斬撃を避けたけど、
近くに居た私は髪の毛がはらはら斬られちまったぞ!

『あっっぶなぁぁぁ!!!!何すんのよ晋助ッ!!!』
「万斉テメェ、いい加減に言い寄るのは止めねぇか。」
「何を言うでござるか晋助。今時クーデレなんて古いでござる。
 時代は今、変デレを求めているでござるよ。」
『変デレって何?変態デレデレ?』
「って言うか自覚あったんッスか万斉……。」

さらりと真顔でとんでもない発言をした万斉に、
私とまた子ちゃんが若干顔を引きつらせながら突っ込んだ。
武市さんは晋助に斬られるのが嫌なのか、すっかり大人しくなっている。
まぁこの人元々戦術家だし、戦闘には向いてないからな。

「馬鹿はテメェは。そんな気持ち悪いもん誰も求めちゃいねーよ。」
「いいや!時代は変デレの時代でござる!!」
「いや、それを言うならフェミデレでしょう。」
「武市変態、アンタはちょっと黙ってるッス。」
『ってかお前等何でもかんでもデレ付ければいいと思うな。』

何故か食堂で睨みあったまま動かなくなってしまった万斉と晋助に、
私は頭を抱え、深いため息を付いた。

『分かった、分かりました!
 じゃあ皆にアタシからプレゼントを要求します!』

私がちょっと大きめの声でそう言うと、3人が一斉に私の方を向いた。

『3人とも、今日一日だけでも仲良くして!
 じゃないと来年からチョコなしだからね!!』
「「「…………。」」」

私の言葉に3人はまた一斉に顔を見合わせ、
そしてそのまま無言でテーブルに着席した。
とりあえずこれは、OKと取ってもいいのかな?
こうして私たちは平和なホワイトデーを過ごしましたとさ。




鬼兵隊の平和な一日

(ちょ、万斉、醤油取れ) (お願いするでござる) (んだとテメェ……) (晋助さん、今日一日の辛抱ですよ) (……くそっ、取って下さい万歳さん) (お主全然素直じゃないでござるな……ほら) (こ、これはこれでキモいかもしれない……) (お願いする晋助様可愛いッス……!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ ウチの鬼兵隊はナルシストと変態2人と晋助馬鹿で構成されています。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/03/14 管理人:かほ