「おぉ、3人ともここに居たのか!探したぞ〜!」 屯所をウロウロしていてたまたまたどり着いた台所に、 またまた探していたトシと総悟がと一緒に座っていた。 俺は一石二鳥だと喜びながら2人に書類を渡す。 「トシにはこの書類。期限は明後日だからな、頼んだぞ。 んで、総悟にはこの始末書。ちゃんと書くんだぞ? この前みたいに何コレ作文?みたいなモン書いたら駄目だからな!」 俺は総悟に一言念を押しながら書類を手渡し、 空いていた席に座ってのものであろうコップに入っていたお茶を飲んだ。 何故か3人が驚いたように俺を見ているような気もしたが、あまり気にしなかった。 「あー、しっかし今日は暑いなぁ!!見廻り面倒だなぁ、!」 俺がにそう言うと、は一瞬否定したが、 すぐに自分が見廻りだと思い出したのか、嫌そうな顔でサボろうと言い出した。 それにトシがすぐさまツッコミを入れる。 俺がふと外を見ると、あたりはすでに夕焼けに染まりつつあった。 この暗さでを1人見廻りに行かせるのは、なんだか危ない気がする……。 すると、が面倒くさいと言い出したので、 これはチャンスだとばかりに俺はにこう言った。 「そう言うな。俺も一緒に行ってやるから。」 俺の言葉には一瞬驚いてトシと総悟の方を見たが、 すぐに『ありがとうございます』と言ってきて、2人での見廻りが決定した。 少し肌寒い夕暮れ時。 俺はと並んで歩きながら、あたりを見回していた。 折角のとのデートと言えども、見回りはちゃんとしなければ。 俺はに話しかけながら真っ赤に染まった江戸の町を歩いていた。 すると、急にの口から『はぁ……。』というため息。 「どうした、?お前がため息なんて……。」 俺が心配になっての顔を覗き込むと、は慌ててこう言った。 『あ、いえ、別に何も!えぇっと、ちょっと肌寒いなぁ、なんて。』 そしてが早く帰ろうと俺の前を歩き始めると、はっくしゅ!とくしゃみの声。 それは他の誰でもない、のものだった。 俺はすぐに自分の隊服を脱ぎ、振り返って何かを言おうとしたにそれを着せた。 『こ、近藤さ……。』 「そうだな、早いトコ帰るか!」 俺がにっこり笑って歩き出すが、はその場に立ち尽くしてしまっていた。 「……??」 俺は不思議に思って振り返り、に声をかけた。 『……近藤さん、お願いしてもいいですか?』 「ん?どうした?」 『手、つないで下さい。』 俺が振り返ると、が俺に自分の片手を差し出してそう言った。 「……え、えぇぇ!?なっ、何言ってるのちゃん!?」 『繋いでくれなきゃ、歩きませんからね。』 俺が慌ててに問うが、は本気らしく、全く手を引っ込める気配がない。 周りに居た通行人が俺とを交互に見ては微笑ましそうに笑って通り過ぎる。 俺もも歌舞伎町では名の知れたカップルだ。 こんな反応も、まぁ当然といえば当然なのだろうが……。 「そ、それは困る!ってかいいけど!!別につないでもいいけどね!!」 俺は急に恥ずかしくなり、乱暴にの手を取って歩き始めた。 小さくて少し冷たいの手に、自然と心拍数が上がる。 よくよく考えると、こうして手をつないで歩くのは初めてだった。 意外と小さくてすぐに壊れてしまいそうなの手は、 俺の体温によってだんだん温かくなっていった。 「あっ、すまん。ちょっと速かったか?」 気がつくと、が小走りで俺に付いてきていた。 俺はすぐに立ち止まり、に尋ねる。 すると、は俺の問いには答えずに、嬉しそうな笑顔でこう言った。 『……こっち向いてくれた。』 「へ?」 『手繋いでくれてから、近藤さんずっと前を向いてたから。』 「あ、あぁ……そうだったかな。すまん。」 『謝らないで下さい。手をつなげただけで……十分です。』 の寂しそうな表情と声に、チクンと胸が痛んだ。 「その、、悪かったな。俺たち、付き合ってもう一年以上経ってるのに。 キスどころか、手を繋ぐことすらしてなかったなんてな……。 のこと、嫌いって訳じゃないんだぞ、断じて!!」 俺は申し訳ない一心でにそう言った。 自然と、繋いだ手に力が入る。 「でもなぁ……なんか、調子狂っちまって。」 俺はの手を握ったまま、想いの内をに話した。 今までずっと、という可愛らしい出来た女の子が 自分の彼女だった事がコンプレックスだったということ。 お妙さんの時と違って、両想いだということが信じられなくて、 嬉しくて、むず痒くて、どう接していいのか分からなかったこと。 しかし、もう俺は迷わない。 俺はが好きだし、も俺を好きで居てくれると確信したから。 ずっと思ってきた事を打ち明けられて、 驚いたような安心したような表情のに、俺はにかっと笑いかけた。 すると、は悪戯っぽく笑ってこう言った。 『じゃあ、アタシがお妙さんみたいに素っ気なくすれば、 近藤さんは好きだーって、来てくれるんですよね?』 「それ止めて!!ものすごく落ち込むから!!」 俺が慌てて言うと、は本当に可愛らしい顔で笑い始めた。 俺もつられて笑顔になり、いつの間にか2人で笑いあっていた。 そして、今度はしっかり手を繋ぎ、歩調を合わせて屯所へと帰っていった。 『……ゆっくりでいいです。何だか、安心しましたから。』 屯所の門まであと僅かという所で、が誰に言うでもなく呟いた。 『アタシ、近藤さんに嫌われてるんじゃないかって、ずっと不安で……。 でも、違うって分かったから、アタシ、待てます!』 これ以上ない笑顔で俺ににこっと笑いかける。 は、反則だろ、その笑顔……。 今や俺の手は汗でびしょびしょで、顔はきっと真っ赤なんだろう。 自分が思っていたよりもに想われていることが、 生きてて良かったと思えるくらい嬉しかった。 ドキドキしながら歩き続けると、とうとう屯所の門の前に到着してしまった。 このまま帰るなんて出来ない。を安心させてやりたい。 こんなにも想ってくれているのに、このままじゃ申し訳ない。 俺は短くの名前を呼んで、振り返ったに口付けた。 『んっ……。』 ほとんど考えなしで行動した俺は、少しの間と唇を重ねた後、 急にこの上なく恥ずかしくなり、手を離して上擦った声でこう言った。 「こ、これで2つクリアだなっ!」 これ以上と一緒に居ると心臓が爆発してしまいそうで、 ろくにの顔も見ずに屯所の扉に向かって歩き始める。 『……近藤さん、手と足が一緒に出てます。』 「なっ!?そ、そうか!?」 に指摘され、俺は慌てて歩行を元に戻す。 そして、先に戻ると言いながら、逃げるように屯所の中に入った。 「……あぁ、俺、今すぐ死んでもいい……。」 ズルズルとその場にへたり込んだ俺を見て後ろから入ってきたが驚くのは、 俺がそう呟いてから2分後の話。そんな君だから
(大好きなんだけどな) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ やっとこさ近藤サイドとヒロインサイド完結です! お楽しみ頂けたら幸いですーvv ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2009/05/16 管理人:かほ