『あっ、佐々木局長だー。』 アタシが道端で偶然見つけた佐々木さんの名前を呼べば、 信女ちゃんと何かを話していた佐々木さんが全速力でアタシの元に歩いてきてくれた。 全速力といってもただの早歩きだったけど、 それでも普段の佐々木さんからしたら随分早い移動だったと思う。 「偶然ですねさん。どうですか、これから2人でお茶でも。」 『え?お茶?佐々木局長、今お仕事中でしょ?』 まさかの申し出にアタシが驚いてそう尋ねれば、 佐々木さんは「そんなのどうでもいいんです」と言ってアタシの手を掴んできた。 『え、ちょ、』 「さぁ行きましょうかさん。信女、今からお前が指揮を執りなさい。」 『えっ?指揮?佐々木局長、今から何を……。』 「なに、ただのテロリストの鎮圧ですよ。私が居なくてもことは運びます。」 『ちょっと待ってそれすんごい大事なお仕事!!』 アタシは何とか佐々木さんの腕から逃れその場に踏みとどまった。 すると佐々木さんは眉間にしわを寄せてアタシを見る。 「どうして嫌がるんですか。」 『嫌がってるわけじゃなくて、佐々木局長、お仕事して下さい!』 「さっきも言いましたが、仕事は私が居なくてもことが進みます。 しかし私の恋路は私が居なければ始まりません。 もちろん、相手であるアナタが居なくても話は進みませんが。」 『こっ……!?も、もう!またそうやってアタシをからかって!』 「からかってなどいませんよ。」 佐々木さんは真面目な顔でそう言うと、おもむろにアタシの頬に手を伸ばし、 そしてその大きな手で優しくアタシの顔を包み込んだ。 「さん、私はアナタの姓を今すぐにでも佐々木に変えてやりたいんですよ。」 佐々木さんがあまりにも真剣な顔でそんなことを言うもんだから、 アタシは思わず顔を真っ赤にしてその場で固まってしまった。 もしや今のはプロポーズなんだろうか。紛うことなきプロポーズですよね? アタシは今、佐々木さんにプロポーズされたんですよね!? 『え、えぇぇ!?』 ようやく状況を理解したアタシは、思わず大声を上げて顔をさらに真っ赤にさせた。 目の前では佐々木さんが「ギザカワユス……」とか言いながら 息を荒くしてだらしない顔をしている。ハァハァ言ってる。正直ちょっと怖い。 佐々木さんの斜め後ろでは信女ちゃんが無表情でアタシ達を見つめていた。 ちょっとは助けてくれてもいいじゃない。 お願いだからおたくの変態局長さんをどうにかして下さい! 「さん、テイクアウトで。」 『え!?ちょ、何!?いやっ、ちょ、きゃああー!』 アタシがそう叫んでいる間に、アタシの体は佐々木さんの肩に軽々と担がれてしまった。 精一杯抵抗したつもりなんだけど、やっぱり男の人の力には敵わない。 っていうか今の佐々木さんには絶対に絶対に敵わない! だらしない顔してハァハァ言いながらアタシをお持ち帰りする気なんだ! とりあえず、誰か助けて!! 「佐々木殿ォォォ!!!!!」 『…………!』 助けを求めた瞬間、どこか遠くの方から聞きなれた声が近づいてくるのが分かった。 アタシは慌てて顔を上げその声の主を探す。 すると前方から近藤さんが慌てた顔をしてこっちへ走ってくるのが見えた。 『近藤さん!』 「やれやれ……見つかってしまいましたか。」 佐々木さんは近藤さんの姿を確認すると観念したかのような溜息を吐いた。 そしてゆっくりとアタシを地面に降ろし、近藤さんの方に向き直る。 近藤さんはと言うと、ようやくアタシ達の元へ到着し、 佐々木さんの目の前で立ち止まってぜぇぜぇいってる息を整えているところだった。 「お久しぶりです近藤さん。真昼間からランニングなんてお元気ですね。」 「ランニングじゃありませんよ!! 佐々木殿!アンタウチのに何してたんですか!!」 ウガー!っと食ってかかる近藤さんを目の前にして、 佐々木さんは依然涼しい顔でこう答えた。 「お茶に誘ってました。」 「さっきを担いでたでしょーが!!」 「さんがなかなか首を縦に振ってくれなかったので、強行手段で。」 「アンタエリート警察じゃなかったのか!!」 近藤さんはそうツッコミを入れると、 傍に居たアタシをグイッと抱き寄せて佐々木さんから遠ざけた。 「佐々木殿には悪いですが、は絶対に嫁にやりませんよ!」 「何を仰いますか。 そこら辺のどこの馬の骨とも分からない連中に嫁にやるくらいなら、 このエリートである私にさんを任せる方がアナタも親として安心でしょう。」 「は一生お嫁になんか出しません!」 『えぇっ!?近藤さん、それはちょっと……!』 アタシは近藤さんの腕の中で力なくそう抗議して苦笑した。 自分で言うのもなんだけど、近藤さん、相当親バカだからなぁ……。 いっつもアタシのこと嫁に出さないだの何だの言ってるし、 真選組の隊士たちにもアタシに手を出さないようにっていつもキツく言ってるから。 別にそんなに心配しなくても良いのになぁ。 アタシ特別可愛いわけでもないし、そんなにモテモテってわけでもないし。 「は無自覚なところが心配なんだよなぁ……。」 佐々木さんたちと別れた帰り道、ふいに近藤さんがそんなことを呟いた。 アタシは自分の考えが読まれていたのかと思って一瞬ドキッとしたが、 どうやらそんな様子でもなさそうなのでホッと胸を撫で下ろした。 「いいか、今度からは俺の目の届く範囲に居てくれよ? じゃないとまた佐々木殿にお持ち帰りされそうになるからな。」 『あはは、気をつけるね。』 アタシと近藤さんはお互いに笑い合い、肩を並べて屯所への帰り道を歩いていった。俺の目の届く範囲にいてくれ
(今度から外出もトイレも風呂も一緒に行くからな!) (いや、それは勘弁して) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 親子といっても養子ですが、血の繋がり以上のものがあるんです。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2012/04/21 管理人:かほ