しょうせつ

『やっほー!久しぶりー♪晴明どこー?皆で七草食べよやー♪』





 

【七草大騒動:前編】

元旦から一週間が過ぎたある日、 とうとうこの平和な結野家にも嵐が舞い込んで来てしまった……。 「様……。」 正月だからと奥でゴロゴロしていたわしは、 突然結野家に舞い込んできた嵐を苦笑いで出迎えた。 何の前触れも無く穏やかな正月をぶち壊された腹いせに、 自分は包み隠さず嫌な顔をしたつもりだったのだが、 嵐はそんなことお構いなしのようだ。 『あっ!晴明居ったー!いっつも言うけど様付けは止めぇって!』 いつものように屈託の無い可愛らしい笑顔をわしに向け、 高いテンションでわしに近づいて肩をバシバシ叩いてくる。 「いや、いつも申し上げておりますが、  貴方様は一応わし等の元主人であります故……。」 バシバシ 『敬語も嫌や!ほんで様付け禁止された途端呼び方変えるその根性も嫌や!!』 バシバシバシ 「いや、あの……。」 バシバシバシバシ 『!名前で呼んで!あと敬語も却下!幼馴染やろ!?』 バシバシバシバ「さっきからバシバシバシバシ鬱陶しいわァァァァ!!!!!」 一向に肩を叩くのを止めようとしないにわしはとうとう痺れを切らし、 思いっきりの手を振り切ってそう叫んでしまった。 わしの豹変振りには一瞬驚き、そして瞬時に大笑いし始める。 『あっはっは!その調子その調子!やっといつもの晴明やー!』 自分がかなり良いとこのお嬢様という自覚が全くないに、 わしも、そして騒ぎに駆けつけた結野衆一同も、大きなため息をついた。 「全く……お主は年が明けても一向に成長せんな……。」 『成長?してるしてる!こないだ測ったら  C寄りのBカップがちゃんとしたCカップに「そういう成長ではない!!!!」 いきなり恥ずかしげも無く(しかも声の大きさもそのままで) とんでもない事を言い出したの言葉を自分の声でかき消し、 ついでに今のの発言に過剰反応を示した奴等を睨みつけておいた。 「で?お主は一体何をしに来たんじゃ。」 『だからさっきから言うてるやん!七草粥食べよって!』 わしの言葉にちょっと怒ったようにそう言って、 は手に持っていた草(雑草のように見えるが、話の流れからしてきっと七草)を わしの目の前にずずいっと突き出してきた。 「そ、そうか……今日は七草の日であったな。  では女達に作らせるとし『なぁ仲麻呂台所どこー?』ちょっと待たんかァァァ!!!!」 人の話も聞かずズカズカと奥に歩いてゆくの肩をガシッと掴み、わしは叫んだ。 『何やねんいきなり!』 「何やねんではないわ!!まさかお主自分で七草を作る気か!?  本家の跡取りであるお主が!!この結野家で!!」 『そうやけど?何か問題でもある?』 「大有りじゃァァァ!!!!!もしお主に怪我などさせてみろ!  このわしが本家からどやされるんじゃぞ!?馬鹿な真似はよせ!!」 『何なんアタシが料理下手やとでも言いたいわけ!?  言うとくけどアタシめっちゃ調理上手いからな!!プロ級やからな!!』 「分かった!分かったからとりあえず落ち着け!!冷静に話し合おう!!!」 わしの言葉になんとかが台所へ行こうとするのを止めたので、 わしは安心して一人ゼーハーと荒い息を整えた。 「ごほん、いいか。七草はありがたく頂戴しよう。  しかしお主に料理をさせるわけにはいかん。」 『過保護かお前は!』 「何と言われようと許すわけにはいかん!」 『ぶー……。』 キッパリとわしが言うと、は顔を膨れさせ拗ねたようにそっぽを向いた。 その拗ねた顔があまりにも可愛くて、思わずわしは視線を逸らしてしまう。 そして遠巻きにわし等を見ていた奴等が写メを撮り出したので、 わしはに気づかれないように式神を出し、そいつ等の携帯を逆パカしておいた。 『じゃあええよ。道満のトコで作るから。』 「なッ!?何故奴のところで……!!」 『だって巳厘野家は分家のモンやったからここまで過保護ちゃうし。』 ぶー、とまだ膨れっ面をしているがつまらなさそうにそう言った。 その言葉にわしの時間がスローペースになる。 このままを台所へ行かせれば万が一があった場合本家に殺される。 しかし、このまま料理禁止令を出せばが道満の元へ行ってしまう。 そしてきっと向こうで2人仲良く七草粥を食べるに違いない……!! 「きっ、吉平ェェ!!!!比羅夫ゥゥ!!!!!」 わしは苦悩の末、門下の2人の名を叫んだ。 「の七草粥作りに立ち合いに危険が及ぶのを全力で阻止するのじゃァァ!!!!!」 「はっ、はぃぃ!!」 「承知致しましたァァ!!!」 『やったぁー♪だから晴明好きやー♪』 はわしの言葉に嬉しそうに抱きついてきた。 あぁくそっ……! そんな事をされては何でもかんでも許してしまうであろうが……!! 「ま、まぁ、他ならぬお主の頼みじゃからな……。」 『うへへ、ありがとぉ♪じゃあ晴明、悪いけど道満呼んできてくれる?』 「それは断固拒否する!!!!」 こうして、わしとの口喧嘩第2ラウンドが開幕したのであった。

おてんばお嬢と過保護な頭目

(あぁ……晴明様が珍しく怒鳴っておられる……) (今年も様はお騒がせ要因なのだな……) (しかも続くってコレ……) (晴明様の血管プッチンいかないだろうか……) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 愛ゆえに!! ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/01/10 管理人:かほ