しょうせつ
!!ホワイトデーのお返しに結婚指輪はどうじゃ?」
『いや、どうじゃって言われても……。』
「ならベビー用品の方がよいか?」
『うん、とりあえずメッチャ大事なコト忘れてへんかな?』
「おぉ!そうじゃった!婚姻届が先じゃったか!」
『誰がアンタの女になったんやってことやァァァ!!!!』
「グボフォァ!!!!!の華麗な回し蹴りに、晴明が奇声を発しながら庭に倒れこんだ。
その様子を縁側でニコニコと眺めているクリステルの隣には、
何故かビデオで一部始終を撮っている外道丸の姿。

朝っぱらから巳厘野衆の者共に
全員分のホワイトデーのお返しを渡して来いと言われ
この結野家にやって来たのはいいが、
まさかこんなバイオレンスな出迎えが待って居ようとは思ってもみなかった。

とりあえず俺は足元で転がっている晴明を避け、
何も見なかった事にしてそのまま普通に
とクリステルに持っていた箱を1つずつ手渡した。

「巳厘野からのお返しだ。大したものではないがな。」
「まぁ、いつもありがとう。」
『わぁ!おおきに♪道満だけや、普通にお返しくれんのは。』
「クリステル様、様、中身は何でござんすか?」

縁側でせんべいを頬張っている外道丸の問いかけに、
2人がちょっと待ってね、と言いながら同時に箱を開け始める。
……と言うか、外道丸は本当に式神なのか?
こんなにふてぶてしい式神、聞いたことも見たこともないぞ。

「まぁ綺麗!これは何?飴?」
『すごーい!大玉の飴ちゃんが雪だるまの中にいっぱい入ってるー!』
「うちの女共が選んだからハズレではないと思うが。」
『ハズレどころか大当たりやで!ホンマにありがとぉ♪』

透明で中の飴が見えるようになっているプラスチックの雪だるまを抱きしめ、
が笑顔で礼を言いながら俺に笑いかけてきた。
その可愛らしい笑顔に、思わずドキッとして顔を逸らしてしまう俺。

その時、地面に這いつくばりながら
こちらを恨めしそうに睨みつけている晴明と目が合ってしまった。

「道満貴様……そんなものでの心が手に入ると思うなよ!!」
『婚姻届より遥かに嬉しい贈り物やけど?』
「なんじゃと!?ならマイホームでも購入してやろうか!?」
『お前人の話聞けよ。』

暴走する晴明に非常に冷たい視線を送る。
しかし完全に暴走している晴明にそんなもの通じるわけもなく、
地面からバッと起き上がった晴明は何の迷いもなくの元へと歩み寄り、
そして肩を掴んだ瞬間に目潰しをされていた。

「ちょっとちゃん!目潰しは流石にダメよ!」

拍手している外道丸の横でクリステルが珍しく慌てだした。
コイツも何だかんだ言って相当ブラコンだからなぁ……。
するとは腕組みに仁王立ちというお決まりのポーズで
フン、と鼻をならせながら声高らかにこう言い放った。

『陰陽師には心の目があるから大丈夫や!!』
「あ、それもそうね。」
「それは突っ込んだ方がいいのか?」
「にツッコむじゃと!?道満貴様ァァァ!!!!!!」
「そろそろ本気で鬱陶しいでござんす。」

俺の言葉を盛大に聞き間違えて胸倉を掴んできた晴明に、
今度は外道丸から棍棒という制裁が下された。
晴明は今度こそ頭から血を噴出してその場にぶっ倒れ、
慌てたクリステルが治療用の式神を出して晴明を介抱する。

「外道丸!お兄ちゃんになんて事するの!」
「すいやせん、鬱陶しかったもので。」
『いいや、外道丸はよぉやった。褒めて遣わすで。』
「ありがたきお言葉でござんす。」
「茶番はいいから!外道丸も治療を手伝いなさい!」

クリステルの言葉に外道丸は気だるそうに晴明の頭に手をかざした。

『もー、クリス姉さんちょっとブラコン過ぎへんかー?』
「それは今更だと思うぞ。」
『晴明も変態やしキモいしシスコンやし……。』
「そう言えば、クリステルには何を渡したんだ?」
『晴明が?メイド服。』
「…………。に婚姻届を渡そうとしていた時点で普通の品物は期待していなかったが、
それにしてももうちょっと違うものがあっただろうに……。

「、お主にもちゃんと普通の品物を買ってきておるぞ……。」
『指輪とか婚姻届が普通じゃないって分かってたんなら
 アタシに喧嘩売ってたってことやんな?ぶっ殺したろかお前。』
「ごめんなさいちゃん、でも許してあげて。」

冷たい視線で晴明を見下げるに、
クリステルは本当に申し訳なさそうにそう言った。
すると回復した晴明が急に立ち上がってガシッとの両手を掴み、
さっきまでの晴明がまるで嘘のように真面目な顔つきでに囁いた。

「、わしは本気でお主を嫁に迎えたいと思っておる。
 しかしまだの心の準備が出来ておらんのなら、
 わしは世間一般的な贈り物でお主に求愛しよう……。」
『え、ちょっ、晴明……。』

急に真面目になった為、はそのギャップにすっかり騙されていたが、
俺はオチが分かっていたのであえて何も言わなかった。
のまんざらではない反応に晴明は急いで部屋に戻り、
嬉しそうな顔をして奥から何かを取り出してきた。
その手に持っているものに、俺とクリステルは同時に肩を落とす。

「!セーラー服と巫女さんならどっちが好みじゃ?」
『それのどこが世間一般的な贈り物やねんコノヤロォォォ!!!!!』

その日、結野家から頭目の断末魔が絶えることはなかった。




変態的な贈り物

(、晴明のセクハラに耐えられなくなったら俺の所に嫁に来い) (じゃあ今すぐ行ってもええかな……) (様それは止めて下せぇ、面白い映像が撮れなくなりやす) (、やっぱり今すぐ来い) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ いや、晴明が変態になったのは私のせいじゃなくて……。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/03/14 管理人:かほ