『きゃあぁぁー!?どうしたんですか佐々木さんそれぇぇ!!』 知恵空党の連中を連れて屯所に帰ってくると、 玄関で出迎えてくれたさんが私の姿を見るなり かなりオーバーに驚いた顔をしてそう叫んだ。 大方、この私が珍しくボロボロになっているのを見て驚いたんだろう。 特に今日は土方さんに左肩をガッツリやられてしまい、 隊服にも血がベットリと付いていたので尚更だ。 「ちょっとやられてしまいまして。治して頂けますかさん。」 私がさんに歩み寄りながらそう言えば、 さんは慌てた様子で私に駆け寄ってきてくれた。 そして負傷した左肩を間近で見てその可愛らしい顔を歪める。 『痛そう……すぐ治しますからね。』 「どうも。」 言い終わると、さんは私の肩に手をあて、治癒能力で傷を癒し始めた。 半分天人の血が流れているさんを 「これは使える」と思って見廻組に連れてきたのが今からおよそ1年前。 最初はさんのことをただの「使えるコマ」としてしか見ていなかったのに、 いつの間に私はさんに別の感情を抱き始めたんだろうか。 『あれ?ところで佐々木さん、信女ちゃんは?』 治療の途中でさんがふと思い出したようにそう尋ねてきた。 「信女なら瓦礫の山に埋まっていますよ。」 『きゃああぁぁぁー!?』 私の返事を聞くなり突然そう叫んで走り出したさんの腕をガッと掴み、 「大丈夫ですからさん」と声をかけてみるものの、 さんは信女のことが心底心配なのか、 『大丈夫なわけないでしょぉぉ!?』とほとんど泣きそうな声で叫んだ。 『佐々木さんアナタ信女ちゃんを何だと思ってるんですか!!』 「大丈夫ですよ。あれは結構丈夫ですから。」 例え瓦礫の山に埋もれようが片腕を一本もぎ取られようが、 いつものように冷静な顔でピンピンしている女、それが信女だ。 それは今までの経験上、自信を持って断言できる。 そういう人間だからこそ私自ら暗殺部隊から引き抜いたのだから。 しかしさんは信女のそういう部分を見ていないせいか、 私の大丈夫だという言葉を振り払うかのように首を横に振った。 『佐々木さんは信女ちゃんのこと全然分かってません! 信女ちゃんも一応女の子なんですよ!?か弱い女の子なんですよー!?』 「さん、アナタちょっと信女を美化しすぎです。 心配なのは分かりましたから、まず傷の手当てを……。」 『そんなことより今は信女ちゃんです!!』 「私の手傷はそんなこと扱いですか、泣きますよ。」 まるで駄々をこねる子供のように喚くさんに、私は深いため息を吐いた。 今まで危ないからとさんを屯所から出したことはなかったけれど、 それがまさかこのような形で仇になろうとは……。 今度さんに信女の戦場でのあの冷酷さを見せてあげなければ。 もちろん、確実に安全な場所から。 「分かりました、さんが私の手当てをしてくれれば、 すぐにでも信女を釣りに行きますから。」 私がさんの顔を無理やり自分の方に向かせてそう言えば、 さんは驚いた様子でその大きな目をさらに大きく見開いた。 『え!?つっ、釣り!?助けるとかじゃなくて!?』 「ドーナツを餌に釣り糸を垂らしておけばすぐに飛んできますよ。」 『佐々木さんは信女ちゃんを何だと思ってるんですかー!』 「さん、手当て。」 またジタバタと暴れだしたさんに冷静にそう言えば、 さんはハッとして私の傷の治癒を再開した。 小さく可愛らしいさんの手が私の肩に触れた瞬間、 そこからじんわりと暖かいものが全身に流れ込んでくる。 そしてみるみるうちに貫かれた肩の傷が消えていった。 『はいっ!これでもう大丈夫です!さぁ佐々木さん!早く信女ちゃんを!』 治療が終わり一息ついたと思ったら、さんはすぐにそんなことを言ってきた。 一体どこまで信女のことが心配なのか。 少しは私の心配をしてくれてもいいのに。 「ありがとうございました。」 私は部下に用意させた新しい上着に着替えながら礼を言い、 そしてさんの手を取ってキョトンとするさんにこう言った。 「お礼と言っては何ですが、今夜一緒に食事でもどうですかさん。」 『あーもーそうゆうのはどうでもいいですから!早く行って下さい!!』 さんは二つ返事でそう怒鳴ると、私の手を振り払って 早く行けと言わんばかりに私の背中をグイグイと押しやった。 『早く信女ちゃんを連れて帰ってきて下さいね。今度はケガしないように!』 そう言ってまるで天使のように微笑んださんに別れを告げ、 私はまたあの瓦礫の山へと足を運んだ。 「……またフられてしまいましたか。」 なんとなしに呟いた自分の言葉に、私は深い深いため息を吐いた。逃した魚
(三天の怪物殿、何か釣れたか?) (いいえ……今日も全く釣れませんでした……) (…………?) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 六万打本当にありがとうございました! コミックス・アニメ派の人には全く優しくないと評判のヨソウチでした。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2011/10/23 管理人:かほ