「、わしをお兄ちゃんと呼んでくれんか?」 「そうじゃ、メイド服を買って来たんじゃ。着てくれんか?」 「い、痛いではないか!メイドは嫌なのか?ナースの方が良かったか?」 「!おいちょっ、バックドロップてお主っ……!!おい待たんか、!!」 そんなこんなで、アタシは今プチ家出中だったりします。 朝っぱらから晴明がド変態なもんやから、ちょっとプチンときてもーて。 え?何?ちょっとプチンときたくらいじゃバックドロップは出ぇへんって? じゃあかなりプチンときちゃったんやな。 だって晴明ってば、いっつもこんな調子なんやもん、頭にくるやん。 せっかくアタシ達は小さい頃からの幼馴染で、 しかもアタシは晴明の許嫁やっていうのに、 毎日毎日メイドだのナースだの巫女さんだの、アタシを何やと思ってるわけ!? ちょっとは好きとか愛してるとか、そーゆー甘い言葉が言われへんの? 今日はホンマに頭にきたから、晴明をとことん困らせたろうと思います! 『っちゅーわけで、浮気して、道満!』 「いや、浮気してってお前……。」 晴明が一番嫌がるコト。それはアタシが道満と仲良くすること。 アタシと道満も幼馴染やから結構仲はいいし、昔からよく遊んでたんやけど、 晴明との婚約が決まってからは晴明が嫉妬するからあんまり接してへんかった。 でも、今日はんなもんお構いなしや! めーっちゃ道満と仲良くして、晴明に目にもの見せてくれる! 「何だ、また喧嘩か?お前等も飽きないな。」 『アタシはとっくの昔に飽きてるっちゅーの! 晴明が悪いねん、アタシを人形みたいに扱うから……。』 「まぁ、玄関先で喋るのもなんだ、とりあえず入れ。」 『わーい、ありがとぉ!おじゃましまーす!』 アタシと晴明の喧嘩事情を全部知ってる道満は 呆れた顔をしながらもアタシを家の中に招き入れてくれた。 そしたら巳厘野家の人たちがアタシの姿を見てギョっと驚き、 ひれ伏したり拝んだり深々とお辞儀したりしてくる。 アタシはそれを苦笑いでかわしきった。 『うぅ、やっぱり慣れへん……。』 「当たり前だ。お前は一応、本家の人間なんだからな。」 『何で一応ってトコ強調したん?腹立つ!』 「いたっ、叩くな!ほら、着いたぞ。」 アタシが軽く道満を叩けば、道満はちょっと怒ったようにそう言った。 辿り着いた場所は道満の部屋、ではなく、ただの客室。 それにアタシは不満たっぷりの顔で道満を見る。 『何で客室なん?道満の部屋は?』 「アホか!俺の部屋なんかにお前を連れ込んだら晴明に殺されるわ!!」 『だって浮気やで!?押し倒すくらいの覚悟で来いや!』 「お前等の夫婦喧嘩に俺を巻き込むな!!!!」 せっかく来た客室に入ろうともせず、 入り口のところで口喧嘩を始めたアタシ達の周りには、 巳厘野家の人たちが遠巻きに円を作っていた。 そして喧嘩をしながらでもヒソヒソ話しが聞こえてきたんやけど、 何故か『離婚』『再婚』『跡取り』というワードが飛び交っている。 きっと何か盛大な誤解を招いているんだろうとアタシは思った。 そんな時、巳厘野家の玄関の方から急に爆発音が聞こえてきて、 そのすぐ後にものっそい大声が響いてきた。 「どこじゃァァァ!!!!! ここに居るのは分かっておるんじゃぞ!!」 『ゲッ、あの声は晴明!?』 「おい、今巳厘野家が完全に巻き込まれたぞ。どう責任をとるつもりだ。」 『え?責任って……体で?』 「余計状況が悪化するだろーが!!!!!」 アタシのちょっとしたボケに道満が思いっきりツッコめば、 それが居場所を告げる合図となってしまったようで、 中庭の方からものっそいスピードで晴明がこっちに走ってきた。 「どぉぉぉぉまんんん!!!!!!」 「ぐふぉあ!?」 そして道満の名前を叫びながらスピードに乗ってまさかの跳び蹴り。 晴明ってそんなにアクティブな性格やったっけ!?とか驚きつつも、 アタシは吹っ飛ばされた道満に駆け寄って体を起こした。 『ちょっ、道満大丈夫!?』 「お前……これが大丈夫に見えるか……?」 「!!そやつから離れるんじゃ!!」 『嫌やし!!晴明こそどっか行ってや!アタシ今道満と浮気中やねん!』 「何ィィィ!?」 「今浮気中って、一体どんな浮気だ……うっ。」 道満が苦しげに最後のツッコミを言い切り、そのまま気を失った。 『きゃー!?道満しっかりー!!』 「!そやつを捨ててさっさと戻って来い!」 『嫌ッ!!!だって晴明、全然アタシのこと大切にしてくれへんもん!!』 「何っ?わしはお主を精一杯大切にしておるではないか!」 『してない!!晴明にとってアタシはただのお人形なんやろッ!!』 アタシが泣きそうになりながら晴明に怒鳴れば、 晴明が困ったような、驚いたような、ショックを受けたような顔をした。 「……。」 『……晴明、アタシに好きとか愛してるとか、全然言うてくれへんし。』 「す、すまん……。」 『毎日毎日、アタシで遊んでるとしか思われへんもん。』 アタシは晴明から目線を逸らしてそう言った。 ちょっと拗ねてるみたいになってもーたけど、これがアタシの本心。 晴明が着てほしいんなら、メイド服だって着てあげるし、 ご主人様って呼んであげるし、お兄ちゃんとも呼んであげる。 でも、アタシだって晴明に大好きとか愛してるとか言うてほしいもん。 優しく頭撫でられたり、一緒に手ぇ繋いで歩いたり、 ギュッて抱きしめられたり、微笑みかけたりしてほしいもん。 そんなことを思ってたら、 眉間にしわを寄せて俯いてた晴明がゆっくりと顔を上げて、 そしてゆっくりとアタシの方に歩み寄ってきた。 「、すまなかった。わしは心の底からお主を愛しとる。」 『晴明……。』 「わしの妻はお主以外考えられん。だから、またわしと一緒に居てくれるか?」 『……〜っ!アホッ!!』 ちょっと困ったような笑顔の晴明に、アタシは泣きながら抱きついた。 そうしたらアタシが急に道満を支えていた手を離したせいで 道満の頭がゴンッと床に叩きつけられ、 同時に蛙が踏み潰されたような声が発せられたけど、アタシ知ーらない。 「では、帰るとするか。」 『うん!』 こうしてアタシ達は巳厘野家の犠牲のおかげで無事仲直りし、 仲良く手を繋いで一緒に結野家へと帰ることになりました。 そして帰り道、アタシの手を引いてちょっと前を歩いてた晴明が ちょっと言い出しにくそうな顔をアタシに向けて、こう言った。 「のう、。」 『ん?何?』 「今度からは、毎朝まずお主に愛していると言ってやろう。」 『えっ?いやっ、そんなん……ちょっと恥ずかしい……。』 優しい笑顔で言われ、ちょっと照れたアタシやったけど、 内心はめちゃめちゃ嬉しかった。 「愛していると言って、お主にキスをして、それから……。」 『えっ?そっ、それから?』 ふいに立ち止まった晴明に、アタシも自然と立ち止まり、 ドキドキしながら晴明の言葉を待った。 「それから、今度こそメイド服を着てもらうとしよう!」 『…………はぁぁぁ!?』 こうして、またしてもアタシは巳厘野家にプチ家出することになりましたとさ。別に嫌ってわけじゃないけど!
(もうちょっと甘い雰囲気味わわせろやこのボケェェェ!!!!!) (痛ッ!!!!、バックスピンエルボーてお主っ……ちょまっ、ー!!!!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ いや……お兄たまがこんなに変態になったのは不可抗力というか……。 ちなみに、元ネタは言わずもがな某動画サイトの『脱げばいいって〜』です。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/02/28 管理人:かほ