「銀さーん、洗濯物出しといて下さいよ。 さん今忙しいんで、僕が代わりにやっときますから。」 誰かさんと誰かさんが言い争う中、そんな新八の声が聞こえた。 イライラしていた俺はその言葉を無視してジッとジャンプを凝視する。 とは言ったものの、さっきからギャーギャーと言い争う声が煩くて全然集中できねぇ。 相手が相手だから怒鳴りつけて印象を悪くするのもどうかと思って 今までずっと黙って耐えていたが、もう我慢の限界だ。 俺はテーブルを挟んで口喧嘩をしている2人に向かって力の限り怒鳴りつけた。 「いい加減にしろテメー等!! さっきからギャーギャーうるせぇんだよ!!! そんなに喧嘩してぇならヨソでやれ、ヨソで!!」 『銀時!アタシ悪くないよ!そんなに言うんだったらこの人追い出して!』 「何を言うんじゃ!わしとお主は一心同体じゃろう!」 『はぁ!?アンタいい加減にしてよ!!!』 「いい加減にするのはテメー等だ!!!!」 俺は言い争っているとお兄たまに向かって思いっきり怒鳴った。 するとようやく2人は言い争いを止め、渋々その場に着席する。 実はあの闇天丸事件以来、お兄たまがの事をかなり気に入ってしまい、 毎朝毎朝仕事をほっとらかしてに会いに来ては こんな風に完全に一方的な求愛行動をしているのだ。 はあまりお兄たまをよく思っていないらしく、 玄関のチャイムが鳴る度に『しつこい!!!!』と飛び蹴りを食らわせている。 それなのに、お兄たまは諦めるどころか行動がエスカレートし、 最近ではのストーカーと化していたりする。 そんなお兄たまの行動に俺たちは 「実はお兄たまドMなんじゃねぇの?」と思い始めているところだ。 「!!お主今はフリーだと言っていたではないか!」 『言いましたけどそれが何か!?』 「ならわしと結婚してくれてもいいじゃろう!」 『アタシにも選ぶ権利があるんです!!』 「じゃあわしにもと結婚する権利がある!!」 『ねぇよそんな権利!!!!』 どんなにに罵られても、殴られても蹴られても、 例えバックドロップやエルボーを食らわされても、お兄たまは決してめげない。 それどころか才能と言えるほどのポジティブシンキングで の怒りをさらに逆撫でするのである。 こんな性格でよく道満の事をとやかく言えたもんだ。 「ちょっと2人とも!少し落ち着いて下さい!」 さっきまでスルーを決め込んでいた新八だったが、 がそろそろ本気でイライラしてきているのを感じたのだろう、 立ち上がったを宥めるようにして2人の間に割って入った。 「晴明さん!あんまりさんを刺激しないで下さい!」 「そうアルバカ陰陽師。さっさと帰れヨ。」 「いいや帰らんぞ!!がわしと結婚すると言うまでわしは帰らん!!」 『だからしつこいって!!』 お兄たまの堂々とした迷惑宣言にが思いっきり怒鳴った。 「しつこい男は嫌われるネ。ファンタに溺れて死ぬヨロシ。」 『よっしゃ神楽ちゃんいいこと言った! 晴明さん、もしファンタ5L一気飲み出来たら結婚してあげますよ!』 「ファンタはちょっとキツいのう……昆布茶はダメか?」 「いや、昆布茶でも5Lはキツいと思いますけど……。」 どうやらお兄たまはまともな思考回路を失ってしまったようだ。 人間業とは思えない事を平然と言ってのけたお兄たまに、 新八が呆れかえった声で弱々しくツッコミを入れた。 このまま4人で喋らせていても、この喧嘩は一生終わりを迎えないだろう。 そう考えた俺は「はぁ、」と大きな溜息を吐き、 そして手に持っていたジャンプを仕方がなしに机の上に置いた。 「お兄たま、には後でキツく言っときますんで、 今日のところはお帰り願えませんかね。」 『銀時……。』 俺がお兄たまに歩み寄りながらそう話しかけると、 が俺を感謝の眼差しで見つめてきた。 いいぞ、もっと俺に感謝しろ。 そしてお兄たまが帰宅したあかつきには俺にいちごパフェを奢るがいい。 「銀時貴様、わしとの仲を引き裂こうと言うのか?」 「いやいやまさか。でもねお兄たま、こういう言葉知ってます? 押して駄目なら引いてみろ。 だって毎日会ってたらお兄たまの大切さに気づかんでしょうよ。」 俺はもっともらしい事を言ってお兄たまを丸め込む作戦に出た。 これでしばらくの間へのラブコール&アタックを止めてくれれば、 万事屋にとっても結野家にとってもイッツオールライ、いい事尽くしだ。 『そうですよ晴明さん、銀時の言う通りです! アタシにもじっくり考える時間っていうのが必要なんです! だから当分アタシの前に現れないで下さいね、五年くらい!!』 「いや、それ長すぎますよさん……。」 の遠まわしな「二度と来んな」発言に新八が呆れた顔でツッコミを入れた。 すると意外なことに、お兄たまは「ふむ、」と納得したように頷いた。 「なるほど……花嫁修業の期間が欲しいと。」 『言ってねーよ!!!!どの文章がお前の中で都合よく脳内変換されたんだ!!!!』 今度こそ本気でお兄たまに掴みかかろうとするに、 近くに居た新八が慌ててを抑え込んだ。 そんな2人を眺めながら、俺と神楽はお互いに顔を見合わせ肩をすくめた。 「分かった。では日を改めて訪ねるとしよう。 安心せい、花嫁修業なら結野家が全力を持って支援するからのぅ。」 『だからテメーの顔なんて二度と見たくないって言ってんだろーが!!!!!』 の歯に衣着せぬ物言いにそろそろお兄たまがショックを受けるかと思いきや、 お兄たまはそんな素振りは全く見せず、 むしろイイ笑顔で「怒っておるも可愛いのぅ」なんて言って笑っていた。 こりゃあのゴリラ並のしつこさと悪質さだな……。 俺は初めて心の底からに同情した。 「しかし遠距離恋愛とは切ないものじゃのう……。 愛しいとの別れに、わしの心臓は潰れてしまいそうじゃ。」 『そのまま潰れろ!!!!』 また変なことを言ってを怒らせたと思ったら、 お兄たまは爽やかな笑顔で「じゃあの」と言ってさっさと帰っていってしまった。 どこまでマイペースなんだあの人。自由人か。 散々俺たちを引っ掻き回しといて、気が済んだら帰って行きやがったよあの人。 残された俺たちはしばらくお兄たまが去っていった玄関を見つめていたが、 誰からともなしにお互いに顔を見合わせ、そして一斉に溜息をついた。 『あーもう最悪……今日も疲れたー。』 「これじゃ本当に遠距離恋愛する方がマシかもな。」 『遠距離恋愛かぁ……でも今でも十分遠距離恋愛だよね。』 「え?どこらへんが?」 『だってそうでしょう?心の遠距離恋愛。』 「それ恋愛?」それはただの片想い
(ー!やはりお主と会わんとわしの一日は始まらんようじゃ!) (晴明さん、お願いですから日本酒5L一気飲みして下さい) (それができたらわしと結婚してくれるのか?) (いや晴明さんそれ死にますから!!!!!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ ウチの変態お兄たまは近藤さんばりのしつこさです(笑) ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2011/01/16 管理人:かほ