「はぁ……。」 俺がソファに座りながら次の任務の説明をし、に『お前が行けよ』と言ったら、 目の前のベットでだらりと寝転んでいるは心底やる気のなさそうなため息をついた。 「駄目だ。なんもやる気になんない。阿伏兎さん代わりに行って来て。」 そう言うとはゴロンと寝返りを打ち、完全に俺に背を向けた。 「ちょ、俺一応お前の先輩なんだけど。 面倒だからって代わりに先輩行かすか?普通。」 俺は呆れつつもベットに歩み寄り、腰を下ろす。 俺が座った所為でベットが傾き、寝心地が悪くなったのか、 はゴロンとこっちに寝返りを打った。 「いーじゃん別にぃ。今は同じ第七師団の兵士じゃん。ソルジャーじゃん。 そりゃ年上だし先輩だしヒゲだけど、同じ志を持った仲間じゃん。」 「ちょっと待て、ヒゲは余計だったろ。 ってかお前この前『夜兎族なんて滅びちまえ!!』とか言ってたじゃん。 完全に俺と反対意見じゃん。」 「でも団長のワガママに振り回されてる者同士、仲間でしょ?」 「お前は寧ろ団長を振り回してるだろ。」 そんな事ないも〜ん、とが膨れっ面になった。 そんな事ある。大いにある。 何を隠そう、ウチの団長はこのにベタ惚れなのだから。 が男と話せば、団長はその男を半殺し。(場合によっては殺してしまう) に色目を使う奴も、気づかれた時点であの世行き。 同じ師団の奴でも、春雨の奴でもお構いなし。ましてや他人なんて一瞬で殺られる。 唯一ある程度の事が許されている俺でも、妙な真似をしたら即アウトだ。 「はぁ。どうしてこう第七師団にはまともな奴がいないのかねぇ。」 「団長がまずまともじゃないからでしょ。何だっけアレ。類は友を呼ぶ?」 「おいおい、それじゃあ俺まで入っちまうだろーが。 俺は同じ夜兎でも、お前や団長とは完全に違うからな。」 「はぁ!?ちょっと待ってよ!! 言っとくけど、アタシは夜兎って言っても半分だけだから! もう半分は善良な人間で構成されてるんだから!」 「善良ぅ!?お前よく言うなぁ!こないだ敵部隊一個ブッ潰したくせに!!」 俺がそう言うとはガバッと起き上がり、うるさい!と言って肩を思いっきり叩いてきた。 半夜兎だといっても、勿論力は強いわけで、 しかもコイツは手加減っつーもんを知らないから相当痛かった。 叩かれた肩を抑えつつ俺がを睨んでやると、は謝るどころか 『あー、今ので腕骨折した。やっぱり阿伏兎さん行って来てね。』と言う。 「……お前、最近団長に似てきたな。」 「はぁ!?それどーゆー意味!?それは最上級の嫌味ですよー!?」 「どうして?」 「そりゃお前っ、団長と一緒なんて言われて喜ぶ奴がこの世のドコにいるって……。」 俺とは一瞬で青ざめた。 なぜならば、の後ろでいつものニコニコ笑顔が座っていたからだ。 は首をギギギ、と言わせながら後ろを振り向き、 冷や汗をダラダラ流しながら『だ、団長……。』と声を振り絞った。 団長は尚も笑顔で『ん?』と返事する。 あーあ、やっちまったなぁ。 先程の失言を聞かれていたは俺よりも空よりも青ざめていた。 団長と一緒なんて言われて喜ぶ奴がどこにいるかって、そりゃいねーだろーけどよ。 俺は苦笑いをしながら2人の様子を見ていた。 「あ、あはは……。えぇっと、だ、団長、おかえりなさい。」 「うん、ただいま。で?俺と一緒って言われるのがそんなに嫌なのかい?」 がグワッと団長に向けていた首を俺の方に向け、助けを求めてきた。 その目は本気で、冷や汗と青ざめた顔が余計に恐ろしい。 が俺の方を向いたので、団長の目線もから俺に移る。 その顔はいつものニコニコした顔だが、後ろのオーラは禍々しいにも程がある。 俺は冷や汗をかいた。この状況を俺にどうしろと!?打破しろと!? 「あーっと、えっと……。あ、そうだ、団長、任務です。」 「話の変え方が酷いよ阿伏兎。」 テンパって思わず変な話題転換をしてしまい、にまた叩かれる。 いや、俺全然悪くねーだろ、コレ。 「まぁいいや、だし。そういうところはツンデレだって受け止めるからね。」 「あはは……ありがとうございます。」 はまだ震えていたが、団長の言葉に安心したようで、体の緊張が解けた。 っていうか団長、ツンデレ知ってたんだな……。 「それと、阿伏兎?」 「はっ、はい?」 「さっきから見てたけど、随分と仲良さそうだったね。 他の奴等より阿伏兎の事は信頼してるけど、あんまり仲良さそうだと嫉妬しちゃうよ?」 今度は俺がに助けを求める番だった。 ちょ、完全に団長怒ってるよコレ!!指の骨ボキボキ言わし始めたよコレェェ!! 俺の視線に気がついたが慌てて団長に『止めて下さい団長!』と言った。 「あの、ホント、阿伏兎さんはどっちかって言うとお兄ちゃん的存在なんです! だから仲良さそうに見えますけど、実はコレは兄弟愛的な、そんな感じなんです!!」 「血のつながってない妹なんてマニアックな設定でとヤるつもりだったの? やっぱり殺しちゃおうかなぁ、阿伏兎?」 「ちょ、待てよ団長!!の話聞いてた!?全然違うからソレ!!」 団長の殺意は納まる事を知らず、空気が硬球をぶつけられた並に痛い。 「団長!違うってば!!ちょっとは人の話聞けやコラ!! だからぁ!阿伏兎さんは私の実の兄だと思って下さい!!」 「ちょ、!?それもなんか違う!!」 「実の兄?じゃあ俺は阿伏兎にを貰わないといけないの?」 「そうです!それで行きましょう!! あ、でもアタシまだ団長と結婚するって決めたわけじゃ……。」 「!!余計な事言うな!穏便に話を進めたいんだったら!!」 『と、とりあえず一旦落ち着きましょう!』というの言葉で、 俺達はゆっくりと深呼吸をした。(団長は最初から落ち着いてたからやってなかった) そして、が団長にもう一度一から説明し直し、俺はそれをぼんやり聞いていた。 最初は普通だった話が、いつの間にかの身内が俺しか居ないという話になり、 最終的に『さぁ、アタシが欲しいんだったら阿伏兎兄ちゃんに挨拶して下さい!』 という話にまで発展していた。 「……だから何でそんな話になってんの?」 「の頼みならしょーがないか。阿伏兎、を貰うよ?」 「は?あ、あぁ……勝手に、」 「駄目ェェ!!そんなんじゃ駄目!!もっとキチンと言って下さい!!」 「お兄さん、さんを僕に下さい。これでどう?」 「うっわぁ……団長気持ち悪い。」 「おまッ、自分で言っておいてそりゃねーだろ。」 まぁ合格としましょう、とが言うと、団長は笑顔で 『じゃあ今日から心置きなくとヤれるね。』と言い放った。 がまた助けを求めてきたが、俺は目線を泳がせた。 もういいじゃん、コレで。 「あの……阿伏兎お兄ちゃんがまだ早いって言ってるんで、 しばらくはお兄ちゃんと一緒に寝ますね。」 「ちょ、!?何それ嫌がらせ!?」 「阿伏兎……やっぱり俺駄目だ。嫉妬を通り越して殺意が芽生えちゃったよ。 お兄さん、さんの事は僕に任せて、安心して死んでください。」 「えぇぇ!?ちょまっ!!!団長ストッ……!!!!!!」 ある日の午後、俺の断末魔がこだました。嫉妬もほどほどにして下さい
(の所為だぞコノヤロー) (ごめんごめん、お詫びに任務行ってあげるから) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ これは阿伏兎夢?神威夢? ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2008/11/27 管理人:かほ