しょうせつ

ザーザーザー

今日は朝から大雨に見舞われた。

『アタシ雨って大好き!今日たまたま任務なくって良かったぁ♪』

俺と団長がダラけている中、唯一元気なが嬉しそうにそう言った。

「変なの。雨が好きなんてサ。」
『だって、雨だもんって言ったら外に出なくてもいいんだよ?』
「お前は引きこもりだから嬉しいんだよ。
 俺達みたいなやんちゃ野郎にとっちゃあ拷問以外の何者でもねーよ。」

ホントにね、と団長がうなだれる。
俺も力なく窓際にもたれかかって外を眺める。
あぁ、こりゃ明日も続くなぁ。
思わず溜息が出た。

ぼんやりと窓の外を眺めていると、急に2つ分の体重が俺に圧し掛かってきた。
大方予想はついているが、一応表情は変えずにそっちを見てみると、
案の定、団長とが俺に自分の体重を預けていた。

「…………何してんだ?」
『あ、一応聞くんだ。』
「もたれ掛ってるんだよ。」
「いや、だから何で?」
『「だって楽だもん。」』
「…………。」

もぅ何を言っても退かないな、この2人。
仕方がないと諦めた俺は、そのままの体制で居ることにした。
一応俺だって戦闘部族夜兎族だ。
ガキの1人や2人分の体重が圧し掛かってきたからといって何も変わりはしない。
俺はまたぼんやりと窓の外を眺め始めた。

『阿伏兎さん、寒い。』
「はいはい。」

が体を縮ませて寄り付いてきたので、俺はそれを当たり前のように抱き返す。
そして俺の腕の中で丸まっているは『あったかい』と笑みを零した。
それを見て、俺も口元が緩む。

「ちょっと、何2人の世界作ってるの?」

徐に団長が不服そうな声を出したので、がいいでしょー?と軽く返事する。
そんなとは裏腹に、俺は不機嫌な団長の声に内心冷や汗ダラダラだ。

「阿伏兎ばっかズルい。こっちおいでよ。」
『やーだ。阿伏兎さんの方が暖かいんだもん。』
「何だよそれ。ふん、阿伏兎はきっと更年期障害のせいで体温が高いんだよ。」
「ちょ、俺まだ更年期障害じゃねーし。」

失礼な事をサラリと言い放った団長に、がデコピンを食らわせる。
団長は『いてっ』と言ってデコピンされた所を撫でつつ、
殺気のない可愛いげのある顔でを睨む。

『阿伏兎さんに失礼な事言わないの!』
「痛いじゃん、酷いよ。」

ブスーっとした顔でを睨む団長。
で『自業自得だよっ』とか言って俺に擦り寄ってくる。
ちょ、可愛いから止めろそれ。
襲いたくなるから止めろよその行動。

「あーあ、俺ももぅちょっと早く産まれてきたらの射程範囲内だったのになぁ。
 何でよりにもよって更年期障害のおっさん好きなの?」
「いやいや団長、俺更年期障害じゃねぇってば。」
『若いイケメンよりもおっさんの父性を求めているのです。えっへん。』
「なにそれ。親父なんてロクなもんじゃないよ?」
『海坊主さんも射程範囲内だよ?』
「「マジでか。」」

俺も団長も真顔で驚いた。(あの団長ですら、だ)
するとはそれを知ってか知らずか、でも一番は阿伏兎さん〜♪と言って
また俺に擦り寄ってくる。
ちょ、そろそろ我慢の限界だって。(団長の視線の痛さの方も我慢の限界だ)

「、止めろって。襲っちまうぞ?」
『阿伏兎さんなら大歓迎♪』
「なっ……!?」

予想外の返答に柄にもなく顔を真っ赤にしてしまった。
はそれを見て『阿伏兎さん顔真っ赤〜!』とか言ってケラケラ笑ってるし、
団長はものっそ睨んでくるし、幸せなのか幸せでないのかよく分からない状況だ。

「、俺だって経験豊富だからテクニックはあるよ?」
『何の主張?』
「団長それセクハラ。」

ザーザーザーザー

雨はまだ止むことを知らず、さらに雨音が鋭くなってきている。
雨なんて、暴れられないから嫌いだ。
でも、と団長と3人でこんな風に“平和な日常”を過ごしていると、
雨も悪くないなぁと思えてきた。

それは数分後、戦いから遠ざかった2人のガキが
俺の膝枕で昼寝をし始めた時に、最も強く思ったのだった。




それがわぬ願いなら

(雨の日だけでも、せめて、な……) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 平和(?)な第七師団は萌えの究極です(いきなりどうした) ってかマジで阿伏兎さんがお父さん以外の何者にも見えなくなってきたよコレ病気!? ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2008/12/07 管理人:かほ