現在の時刻、22時ジャスト。現場は真選組屯所のとある一室。 きっかけは市中見廻りから帰ってきた沖田隊長の一言だった。 「近藤さん、“マジであった!呪いのビデオ”の最新巻借りてきたんで 夜中にとか山崎とか呼んで一緒に見やしょうぜ。」 そんなこんなで俺とちゃん、そして副長と伊東先生が呼ばれ、 近藤さんの部屋で鑑賞会が行われたのである。 「“それでは、問題の映像をご覧頂こう。”」 お馴染みのあの声がテレビから響いたかと思うと、徐に問題の映像が流れ出す。 俺の隣では何故か副長とちゃんが手を握り合っていた。 まぁこの2人は怖がりだから仕方が無いか、と思ったのは俺だけで、 伊東先生と沖田隊長は正直呪いのビデオよりも怖い顔をしていた。 「あれっ、Replayになったぞ。どこに映ってたんだ?」 「局長見えなかったんですか?後ろの窓に人が居たじゃないですか。」 「え、嘘。どこどこ?一瞬?」 局長が俺に訪ねている間に、リプレイ映像が問題の箇所に辿り着く。 俺が「後ろの窓」と言ったので、全員が後ろの窓に意識を集中させた。 「“投稿者の話によると、窓の外は断崖絶壁のはずなのだが、 カメラが犬を写した次の瞬間、そこに女のような姿が映りこんでいる。”」 暗いトーンでそうナレーションする声に、俺も思わず息を呑んだ。 「……あ、本当d「『ぎゃああぁぁぁぁ!!!!!!』」 やっと人影を見つけた局長の言葉を遮って、 ちゃんと副長が抱き合いながら大声で叫んだ。 「煩いよ土方君!!そしてから離れたまえ!!」 「土方さん、次あそこに映るのはアンタの番ですぜィ。」 「ちょ、総悟!危ないから刀を抜くな!」 副長がちゃんと抱き合っているのが気に食わないらしいこの2人は さっきまで見ていたビデオが霞むくらい怖い顔で2人を睨んでいた。 それを局長が慌てて制止する。 そうこうしていると先ほどの映像が最後だったらしく、 テレビ上には不気味な声と共にスタッフロールが流れ出した。 「ほらほらちゃん、もう終わったからトシから離れろ、なっ?」 まだ怖い顔をしている伊東先生と沖田隊長を宥めるため、 局長は出来るだけ早くちゃんと副長を離そうとしているが、 当の本人達はまだ十分怖がったままだったので中々離れようとはしなかった。 『ふえぇぇん!夜中なんかに見るモンじゃないよアレェェ!!』 「うううウルセェなてめっ、夜中に見るからいっ、いいんじゃねぇか。」 「副長、アンタも十分声が震えてますよ。」 「うううるせぇぞ山崎!!てっ、てめっ、ブった斬んぞ!!」 「土方さん、その前に俺がアンタをブッた斬ってやりまさァ。」 「あーもう!お前等ちょっと落ち着け!」 全くまとまりが無いメンバーに、局長がとうとう声を荒げた。 その声に伊東先生も沖田隊長も動きを止めたが、 ちゃんと副長は相変わらず震えに震えていた。 俺はというと、呪いのビデオのDVDを取り出し、箱に直している最中だ。 きっとこの人たち、DVDを直すなんて行動しないだろうから。 「そういえば、伊東先生って幽霊とか信じるんですか?」 ふと俺が疑問に思ったことを口にすれば、 まだ不機嫌な顔をしていたものの、伊東先生が冷静に返答してくれる。 「いや、そんな非科学的なもの、僕は信じていないよ。」 「あ、やっぱりそうですか。じゃあ何で一緒に見てくれたんです?」 「勿論、が怖がる姿を見たかったからさ。」 さらりととんでもない事を言ってのけた伊東先生は、 S同士何か通じるものがあったのか、沖田隊長と謎の握手をしていた。 それに俺と局長は苦笑いをする。 『えぇっ?鴨太郎、そんな理由で見てたの?酷い!』 「酷いのは君の方だろう。寄りにも寄って土方君と抱き合うなんて。」 『だってこのメンバーの中で怖がりなのアタシとトシだけだもん。』 「ばっ、馬鹿野郎!俺は全然怖がってねぇよ!!」 「……あれ、土方さん、その肩に乗ってるモンなんですかィ?」 ズババババンッ!!!! 沖田隊長の策略にまんまと引っかかった副長は、 ちゃんと繋いでいた手をバッと離し、凄い音を立てて押入れに入り込んだ。 『どこが怖がってないのよ……。』 「、あんなヘタレ放っておいて、今夜は俺と一緒に寝よーぜ。。 どーせお前怖いからって一人じゃ寝れねーだろィ?」 やっと乱闘の原因がなくなったと安堵したのも束の間、 怖くて縮こまるちゃんの肩を抱きかかえ、 沖田隊長が何食わぬ顔でとんでもない爆弾発言をした。 その発言に伊東先生がクワッと怖い顔をして沖田隊長を睨みつける。 「何を言うんだ沖田君!」 「そうだぞ総悟!男女が同じ屋根の下で寝るなんて……。」 「と一夜を共にするのは僕に決まっているだろう!!」 「伊東先生!?」 これが夜のテンションというものなのか。 沖田隊長に便乗して伊東先生までもが華麗なセクハラ発言だ。 これには流石の局長も首が千切れんばかりの勢いで伊東先生に振り返った。 「オイ待て伊東。テメーが誰と一緒に寝るだって?」 「おや土方君。夢の国から帰ってきたのかい?」 「んだとコノヤロー。」 押入れから復活した副長と伊東先生が火花をバチバチと散らせて睨み合う。 その間に漁夫の利を得ようとしている沖田隊長を、 一応ちゃんの養父である近藤さんが必死で押さえ込んでいた。 「総悟!めっ!」 「いいじゃないですかィ近藤さん。 どーせもいつかは誰かのモンになるんですから。」 「は一生お嫁になんか出しません!!」 『えぇっ!?ちょっと近藤さん!?』 あーあ……何だかややこしいことになってきたぞ。 俺はDVDの入れ物をTSU○YAの袋に直しながら醜い争いを眺めていた。 しばらくしたらちゃんに迫っている沖田隊長に気づいた2人が 物凄く怖い顔をして沖田隊長をちゃんから引き離し、 ちゃんを守っている近藤さんに我こそはと詰め寄った。 「近藤さん!真選組の中じゃ俺を一番信頼してるだろ!?」 「近藤さん!真選組で一番理性が働いているのはこの僕だ!」 「いいや近藤さん!伊東先生は俺と同じくらいのドSだし、 土方さんは三度の飯よりマヨネーズプレイが大好きな変態ですぜィ! ここは将来の事も考えて一番歳の近い俺にしとくべきでさァ!」 「何だよマヨネーズプレイって!!!俺はそんな勿体ねぇことはしねーよ!!」 「近藤さん!将来のことを考えるのならの婿は僕にした方が絶対にいい!」 ギャーギャーと騒ぐ3人に、近藤さんは眉をハの字にしながら若干引き気味だ。 まさか自分の娘を取り合うために 副長たちがこんな醜い争いを繰り広げようとは思っても見なかったのだろう。 まぁ局長は恋とかそーゆーのに鈍感だから仕方が無い。 隊士達の間でちゃんが 『真選組に舞い降りた天使』とか呼ばれてる事も知らないんだろうなぁ、きっと。 「う、うるさいぞお前等!ちょっと黙れ! こうなったらに決めてもらう!さぁ、今夜は誰と一緒に寝るんだ!?」 『えっ!?いや、アタシは……。』 局長がとうとう3人を怒鳴りつけ、 急に話を振られたちゃんが焦ったように4人の顔を見回していた。 『アタシは……別に一人で眠れないほど怖くないし、一人で寝るよ。』 予想外(?)の答えに副長と伊東先生、そして沖田隊長が非常に驚いたような顔をして、 その後の近藤さんの「そうか、なら万事解決だな」という言葉で一斉に肩を落とした。 思えば、沖田隊長が勝手に一緒に寝てやるとか言い出したんだっけか。 全く、どこまでも傍迷惑な人たちだ……。 そう思いながらも、『じゃあ退で』みたいな展開をちょっとだけ期待していた俺は 人知れず3人と共に肩を落としていたのだった。君の隣で眠るのは
(じゃあみんなおやすみ。そんなに誰かと寝たいならトシと寝てあげてね) (((…………))) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ なんだかんだで仲がいい真選組が大好きです。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/08/26 管理人:かほ