「オイ、二度と俺に近づくな。 絶対に近づくなよ。隣になんて来るんじゃねぇぞ。」 晋助は呆然と立ち尽くしているに真面目な顔でそう言い放った。 言われたは状況を理解出来ていないのか、 悲しむでも怒るでもなく、ただ驚いた表情で晋助を見つめている。 「あと、俺以外の男とはどんどん仲良くしろ。 俺に一生添い遂げろなんて言わねぇよ。好き勝手に生きていけ。」 『し、晋助……。』 が不安そうな表情と声で晋助の名を呼ぶが、 晋助はそんなの様子を無視して「あと、」と言葉を続けた。 「お前は俺のモンじゃねぇし、俺もお前のモンじゃねぇ。 俺はテロとならテロを取る。思い上がるんじゃねぇぞ。」 晋助がそこまで言い終わると、 とうとうの目が涙でいっぱいになってしまった。 これには近くで一部始終を見ていた拙者と武市、 そして岡田の3名が同時に大きな溜息を吐く。 「何も泣くまで言わなくてもねぇ……。」 「と言うかさん途中で泣きそうになってたんですから、 フォローの一つでもすればいいものを……。」 「晋助は恋愛に関してはとことん不器用でござるからな。」 拙者の言葉に、武市と岡田がまた大きな溜息を吐いた。 「オイ、俺が今言った言葉ちゃんと覚えてるだろうな?」 『…………。』 「オイ、返事しろ。」 『お、覚えてないよ……。』 「何?」 晋助はイラッとしたようにそう言って、 ポロポロと泣き出してしまったの腕を乱暴に掴んだ。 「テメェちゃんと覚えとけよ!」 『そんなのショックで覚えてらんないよぉ!晋助酷い!!』 「どこが酷ぇんだよ!オイ、泣いてないでちゃんと覚えろ!」 自分の思い通りに事が運ばないことにイライラしているのか、 晋助はボロボロ泣きながら震える声で喋るにそう怒鳴りつけた。 前々から思っていたが、やっぱり晋助はバカだと思う。 晋助の思惑を知っている拙者達からすれば何てことのない言葉でも、 何も知らないからすれば恋人から浴びせられる暴言でしかないというのに。 「いいか、もう一度だけ言うぞ。」 『もういいよ!晋助のバカ!!』 「誰がバカだテメェ!!折角俺が一晩かけて考えてやったってのに!」 『うわあぁん!晋助のバーカー!!』 一晩かけて自分を罵る言葉を考えていたのだと誤解したは とうとう大声をあげて泣き出してしまった。 その声に驚いて艦内からどんどん隊士達が集まってくる。 そしてバカとして名高い晋助に泣かされているを見て目を丸くしては、 事の成り行きを知っている奴等に事情を聞いて呆れた顔になっていた。 「あれっ?何スか?とうとう晋助様がに飽きたんスか?」 拙者達の方に歩み寄ってきながらそう言ったまた子殿に、 武市が「違いますよ」と事情を説明し始めた。 「今日はエイプリルフールでしょう? だから晋助さんがさんを驚かそうと色々考えていたみたいなんですが、 どうにも晋助さんのやり方が悪くて大惨事になっていまして……。」 「あぁ……。」 また子殿は武市の言葉に全てを理解したのか、 大泣きしているを哀れんだ目で見つめた。 「泣くんじゃねぇ!分かった、紙に書いてやるからそれを読め!」 『いらないよそんなのぉぉ!!もっとショック受けるよそれぇぇ! 晋助のバカー!!バカバカバーカ!!タカチンコー!!』 「テッメェ……!!」 卑猥な(しかも晋助の苗字にかけた)言葉を大声で叫んだに対し、 とうとう晋助のイライラがピークを迎えたようで、 晋助はこめかみに青筋を立てながら嫌がるの両腕をガッと掴み取った。 その行動に悪い予感がしたのか、 また子殿と武市が慌てて2人の方に駆け寄っていく。 「晋助さん落ち着いて下さい!」 「も晋助様に謝るッス!」 『だって、だって、晋助がぁぁ〜!!』 「今日はエイプリルフールッスよ!!」 また子殿の言葉に、両腕を掴まれたままのが途端にキョトンと泣き止んだ。 『エイプリルフール……?』 「そうッスよ!だから晋助様の言葉は全部嘘ッス!」 また子殿のその一言で は先ほどの晋助の言葉が全てエイプリルフールの嘘なのだと理解し、 安心したように『そうなんだ……』と呟いた。 そんな2人の真正面では、晋助が武市に懇々と説教をされていた。 「晋助さん、貴方も反省して下さいよ。 いくらなんでもさんが可哀想すぎます。」 「誤解したが悪いんだろーが。」 晋助のそんな言葉に、が不安そうな瞳で晋助の顔を見た。 『じゃ、じゃあ……晋助、アタシのこと嫌いになったんじゃないの?』 「俺がそんな薄情な男に見えるのか?」 『み、見えないけど……でも……。』 普段と違わぬ冷静な表情で見つめられ、は困惑したように俯いた。 そんなの様子に、武市が「晋助さん」と咎めるように言えば、 晋助は多少ならずを泣かせたことを反省しているのか、 バツの悪そうな顔をしてぷい、とそっぽを向いてしまった。 「……オイ。二度と俺に近づくんじゃねぇぞ。 隣になんて、一秒たりとも居るんじゃねぇ。」 そんな突然の晋助の言葉にが驚いた表情で顔を上げ、 その場に居た全員がやれやれと肩をすくめて晋助を見た。 「俺以外の男とはどんどん仲良くしろ。 俺に一生添い遂げろなんて言わねぇ、テメェの好きに生きていけ。」 そこまで言って、晋助はの方を見た。 するとは少しだけ顔を赤くして、恥ずかしそうに晋助から視線を逸らす。 「お前は俺のモンじゃねぇし、俺もお前のモンじゃねぇ。」 言いながら晋助はの両腕を解放し、 その代わりの顔を両手で包み込んで自分の方を向かせた。 「……俺はテロとお前のどちらかを選ぶ時が来たら、 迷わずにテロの方を選ぶ。忘れんじゃねぇぞ。」 『晋助……。』 晋助の最後の決め台詞に、はまたポロポロと涙を流し始めた。 そして鬼兵隊の全員が微笑ましそうな目で2人を見守る中、 感極まったが晋助に向かって勢いよく抱きついた。不器用な嘘で愛の告白
(何だよお前……結局泣いてんじゃねーか) (ふえぇぇ、これは嬉し泣きだもん……!晋助大好きっ!) (テメェ……そりゃ俺のこと嫌いってことか) (今のはストレートに受け取って下さい高杉さん!!) (全く、人騒がせな夫婦でござる) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 晋ちゃんのロマンチストっぷりはいちいち分かり難いといい。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2011/04/05 管理人:かほ