銀魂高校の保険医である高杉先生は女生徒に爆発的人気を誇るイケメン先生だ。 先生の魅力はイケメンということだけではない。(らしい) その悩ましげな表情、冷たいとも取れるクールな態度、腰にクる重低音。 それら一つ一つが全ての女子を虜にするものなのだ。(と友達が言っていた) そんなフェロモンの塊である高杉先生のせいで、 ウチの学校には保健委員になりたいと言う女子が溢れかえっている。 そして保健委員になった女子はみんながみんな高杉先生を誘惑してしまうため、 「鬱陶しい」という高杉先生の訴えと校内の風紀を守ることを考慮し、 数年前にウチの保健委員は男子しかなってはいけないという校則が設けられた。 まぁこの校則はアタシが入学する前からあった校則なので、 今の話は全て先輩から聞いた話なんだけどね。 だからアタシは今年度の委員会を決める時、 保険委員を除外して何になろうかなって考えてたんだ。 それなのに…… 「あ、そうそう。今年から女子の保健委員も学校に一人設けることになったから。 そしてその保健委員に職員会議で抜擢されたからな、お前。」 『え?』 教卓にだらしなくもたれかかってそう言った銀ちゃんの目は、 どこをどう見ても明らかに紛うことなくアタシを見ていて、 ついでに言うと「高杉先生フェロモン事件」を知っている生徒達も 何でが保健委員に!?とでも言いたげな目でアタシをガン見していた。 「やっぱ男子生徒だけじゃ色々とムリが出てきてなぁ。 ほら、女子トイレの石鹸交換とか、男子はやりにくいじゃん?」 『いや……それは別にいいんだけど……。』 何でアタシなんですか。 そんな当然尋ねる権利を与えられるべき質問は、マイペースな銀ちゃんの 「じゃあ次は学級委員だけどー」の声によって強制的に却下された。 こうして、アタシの女子保健委員(という名の女子の嫉妬の的)生活は アタシの意思の介入しないところで勝手に幕を開けたのであった。 『いやいやいや、何でやねん。』 一週間前のHRの出来事を思い出し、アタシは思わずそう呟いてしまった。 すると机に座って生徒の健康診断の結果を眺めていた高杉先生が、 「ククク、」と笑いながらアタシの方に振り向いた。 「なんだ、テメェまだ保健委員に抜擢された事が不満なのか?」 『当たり前です!何でアタシなんですか!あの日から女生徒の視線が痛い!!』 「虐めか?だったら俺が一発こらしめてやろうか?」 『それもっと状況が悪化するでしょうが!!』 アタシは女子トイレ用のレモン石鹸をネットに入れる作業をしながら、 高杉先生に力いっぱいツッコミを入れた。 すると高杉先生は何が面白かったのかまた不敵に微笑んで、 机の引き出しからシュークリームの袋を取り出した。 「まぁそう怒るな。これ食うか?」 『食べる!』 シュークリームに釣られたアタシは作業していた手を止め、 高杉先生のところへ駆け寄ってシュークリームの袋を受けとった。 そして近くにあった椅子に腰掛けてから、 元気よく『いっただーきまーす!』と言ってシュークリームの封を開けた。 「ククク……テメェは本当に扱いやすい奴だな。」 『むぅ。悪かったですね、食い意地はってて。』 「別に悪いなんて言ってねぇだろ。 俺はお前のそういう所が気に入ってお前を推薦したんだぜ?」 高杉先生のその言葉に、アタシの口がピタッと止まった。 『え?推薦?』 言葉の意味がよく分からなくてアタシが尋ねながら小首を傾げると、 高杉先生は健康診断票に目線を戻しながら話を続けた。 「俺が女子の保健委員にお前を推薦したんだよ。」 『え?何で?』 「入学式の日、お前だけ俺を目で追ってこなかったからな。」 先生のその言葉に、アタシは何となくだけど理由を理解した。 高杉先生はアタシを自分に興味がない生徒だと見抜いてたんだ。 だから「高杉先生フェロモン事件」のように自分を誘惑してきたりしないだろうと、 多分そういう理由でアタシを女子保健委員に推薦したんだろう。 確かに、入学式の日、校内の女子の話題は高杉先生の話で持ちきりだったからなぁ。 「俺に興味を示さねぇ女生徒なんて初めて見たからな、 逆に俺がお前に興味を持ったのさ。」 『へぇー。そうだったんですか。』 思わぬ裏話にアタシが感心していると、 高杉先生は何故か不満そうな目でアタシを見てきた。 「へぇーってお前……意味分かってんのか?」 『はい?』 不機嫌そうに言った高杉先生に、 アタシは何かしてしまっただろうかと頭をフル回転させる。 でも今までの会話の中で先生を怒らせてしまった原因が見つからず、 アタシは何も言わずに小首を傾げた。 「俺はなァ、俺に興味を示さねぇお前をオトしにかかってんだよ。」 『え?保健室の先生でも単位認定とかあるんですか?』 「単位を落とす落とさねぇの話じゃねぇよ!」 高杉先生にしては珍しく声を荒げたツッコミをしてきて、 アタシはビックリして目を見開いたまま高杉先生を見た。 すると先生は呆れたように一度深い溜息を吐き、 おもむろに顔を近づけてきてアタシの頬に付いていたクリームをその舌で舐め取った。 『なっ……!?』 突然の事にアタシがビックリして言葉を失っていると、 高杉先生はクリームを味わうかのようにその艶やかな唇に紅い舌をチラつかせ、 「俺に惚れさせようってんだよ。理解しろこのクソガキ。」 と言ってイジワルな顔でニヤリと微笑んだ。 その時アタシは、女生徒を誘惑していたのはこの人の方なのではないかと思った。貴方専用の保健委員
(せっ、せっ、セクハラァー!!) (バカ言えテメー。セクハラってのはこういうのを言うんだよ) (ぎゃー!!ちょっとヤだどこ触って……!!誰か助けてぇぇー!!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 六万打本当にありがとうございました! それにしても名前変換ないってお前……。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2011/10/02 管理人:かほ