『……寒い。』 「……雪だからな。」 俺とはそんな下らないやり取りをした後、2人同時に身震いした。 それを見て焚き火をおこしていたヅラが 「貴様等は兄妹か」と呆れたようなツッコミを入れてくる。 『アタシ嫌だよ、こんなもじゃ男がお兄ちゃんなんて。』 「んっだとゴルァ。俺もお前みてーながさつで凶暴な妹いらねぇよ。」 『あぁん?もっぺん言ってみろゴルァ。 今日からお前のことお兄ちゃんって呼んでやろうかゴルァ。』 「上等だゴルァ。かかってこいやゴルァ。」 「止めなさい2人とも!兄妹喧嘩なんてお母さん悲しい!」 「『誰がお母さんだ誰が!!』」 俺ととヅラが一連のコントをやり終えると、 近くに居た隊士達が笑い出すやら呆れるやら各々好き勝手な反応を見せた。 一緒に焚き火にあたっていた高杉も、 大爆笑とまではいかなかったがやっぱり「フッ、」と笑っていた。 何なんだよコイツ。「フッ、」って何だよ、「フッ、」って。 『あれ?そういえば辰馬は?』 「お?そういやぁボケが一人足りねぇな。」 「坂本ならあそこだ。」 俺とが言いながら辺りをキョロキョロと見回していると、 焚き火作業を終えたヅラが手に付いた煤を払いながら俺達の後ろを指差した。 その指の先を辿るように後ろを振り向けば、 そこには普段の辰馬からは想像も出来ないほど哀愁漂った背中が 遠くの山の方を眺めながら体育座りをしていた。 「何してんのアイツ。」 「宇宙に行くにあたって、一つやり遂げねばならんことが出てきたらしい。」 『やり遂げねばならんこと?』 はヅラの言葉に小首を傾げていたが、 その場に居た全員がヅラの言葉で全てを理解した。 そう言えばアイツ、こないだ宇宙に行くって宣言した夜も しつこくに一緒に宇宙に行かないかとか何とか言ってたもんなぁ。 不幸なことに本人は全く持って気づいていないが、 辰馬は出発までにと自分との関係にケリをつける気なんだろう。 『辰馬があんなに落ち込むなんて……心配だなぁ。』 「だったら励ましに行ってやれよ。」 『えぇ?嫌だよ。寒いもん。』 「いいから行ってこいって!ほら!」 俺は寒そうに丸くなったを無理やり立たせ、 手でシッシ、と追い払うようにして辰馬のところへ行くように促した。 は最初はムッとした顔をしていたが、寒さよりも辰馬への心配が勝ったようで、 渋々ではあるが向こうで体育座りしている辰馬の元へと歩いていった。 『辰馬、どうしたの?大丈夫?』 が声をかけると、辰馬は一瞬ビクッと体を震わせ、 そしての姿を確認するとまた驚いたように体を仰け反らせた。 「お、おぉ!大丈夫じゃ!おおお、おまんこそ、何の用じゃ?」 『別に用はないけど……辰馬が落ち込んでたから、心配になって。』 「ほっ、ほーか……。」 は言いながら辰馬の隣に座り、 突然の出来事に動揺している辰馬は心なしか顔が赤くなっているように見える。 そんな2人の様子を焚き火を囲んで見守る俺達の心は、 「早く言ってしまえ!!」の一言で固く結束していたと思う。 「……のぉ、。」 『ん?』 辰馬の声に、が小首をかしげながら辰馬の顔を見た。 「ワシャ近々宇宙へ旅立つけんど、 もしこの戦争が終わったら、そん時はワシと一緒に居ってくれんか?」 『ん?どういう意味?戦争終わったら宇宙に一緒に行こうって意味?』 「い、いや、そうやけんど、そうやのーて……。」 『んー、どうしよっかなぁ。迎えに来てくれるならいいよ。宇宙面白そうだし。』 そう言ってにっこり微笑んだとは対照的に、 辰馬は自分の気持ちが全く伝わらないことに大きく肩を落とした。 そして俺達も2人の会話の噛み合わなさに大きな溜息を吐いた。 「いやいや、そうやのーて。これからもずっと一緒におってくれっちゅー話じゃ。」 『……?いいよ?辰馬の会社に就職すればいいんでしょ?』 「いやいやいや、そうやのーて。 ずっと一緒に働こうっちゅー意味やのーて、えぇっと…… ワシのために毎朝味噌汁ば作ってくれっちゅー意味じゃき。」 『お味噌汁?いいよ?』 「いやいやいやいや!そうやのーて!あーもー!何ちゅーたら伝わるんじゃー!?」 とうとう頭を抱えてウガーっと髪の毛をガシガシし始めた辰馬の頭は、 元々モジャモジャだった髪の毛がさらにモジャモジャになっていた。 辰馬の突然の行動には驚いていたが、 俺達からすればの鈍感さが一番驚くべきところだった。 「なぁ、辰馬アイツ何してんの?何がしたいの?」 「プロポーズ……だと思うんだが……。」 「全く出来てねぇじゃん。プロポーズのプの字も出来てねぇじゃん。 アイツ等さっきから就職の話と味噌汁の話しかしてねぇよ。」 「いや、あれは完全にが悪ぃだろ……。」 俺が毒づくとヅラと高杉が辰馬を哀れみの目で見つめながら返事をしてきた。 周りの奴等もみんな同じような反応だ。 辰馬について来た土佐の奴等なんか、 ハンカチ片手に「坂本さん、頑張って……!」と何故か涙を流している。 何だコイツ等、バカなのか。 『辰馬、ホントに大丈夫?悩みがあるなら聞くよ?』 が辰馬を心配して優しい声でそう言ったが、 俺達は心の中で「お前がその悩みの種なんだよ!!」と総ツッコミを入れていた。 「あーもう!!ええか、よぉ聞きぃや!?」 全く伝わらないことに苛立ったのか、 辰馬は何かを決意したような表情でガッとの肩を掴んだ。 はそんな突然の辰馬の行動に心底驚いた様子で、 何も言えずただ首を縦に振るしか出来ていなかった。 「ワシャが好きじゃ!初めて会うた時からに惚れちゅう! せやき、ワシの嫁さんになってくれ!」 『ぇっ……ええぇぇぇぇ!?』 辰馬の直球ドストレートなプロポーズに流石のも全てを理解したらしく、 一瞬驚いたような顔をして、すぐに顔を真っ赤に染め上げて大声でシャウトした。 『あっ、あの、辰馬っ……!』 「、ワシの嫁さんは嫌がか?」 『そっ、そんなことない!』 「まっことがか!?」 『そんなことない、けど……ほ、ホントに、アタシでいいの?』 「なぁにをゆうちゅう!やからええがよ! アッハッハッハ!ワシャ今こじゃんと嬉しかー!」 辰馬は嬉しそうにそう言うと、いきなりをガバッと抱きしめた。 突然抱きしめられて驚いたは『きゃっ、』と短く悲鳴をあげ、 そして真っ赤になった顔で困ったように辰馬の顔を見た。 『ちょ、ちょっと、辰馬……!』 「おぉ!そうじゃった。一生に一度のプロポーズやき、ちゃんと最後までゆわんと。」 辰馬は思い出したかのようにそう言うと、を解放してその場に正座をした。 「、ワシと――……。」 その言葉に、は恥ずかしそうに一度頷き、 俺達はお互い顔を見合わせて小さく笑った。結婚するぜよ
(あーやっぱり嬉しかー!一生大切にするからのー!愛しちゅーぜよー!) (たっ、辰馬!恥ずかしいってばぁ!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 辰馬の告白はもっとドストレートだと思うけどね。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2012/01/02 管理人:かほ