『はーいコレ、アタシからのバレンタインチョコー。』 アタシが毎年恒例の台詞を言うと、 新ちゃんは礼儀正しく「ありがとうございます」と言ってくれて、 銀時は「よっしゃあ糖分!!」とかなり喜んで箱を受けとった。 毎年思うけど、育ちの違いってこういう所に現れるものなのよねー。 『じゃあアタシちょっと外出てくるね。』 「ヅラんとこか?」 アタシが小さな袋を持ってそう言えば、 早速箱を開け始めている銀時が目線は箱のままで声をかけてきた。 『うん、今日中に渡しておきたいから。』 「ついでに今度飲みに行こうぜって伝えといてくれよ。」 『オッケー、伝えとくね。』 乱暴に箱を開けチョコレートを物凄い勢いで平らげていく銀時に、 アタシは内心呆れつつも苦笑いで返事をして玄関を目指した。 もうちょっと味わって食べなさいよね、なんて、 今更言っても無駄だという事は知っているのであえて言わないことにした。 *** 『はい小太郎。バレンタインデーのチョコレート。』 「毎年すまんな。」 『ううん、いいの。アタシが渡したいだけだから。』 乱暴な銀時を見た後の小太郎のこの丁寧な対応、 毎年のことながらちょっとだけ感動しちゃうなぁ。 小太郎はアタシの手から袋を丁寧に受け取って、 中身よりも何よりも先にアタシに笑顔でお礼を言ってくれた。 やっぱりアタシ、小太郎のこーゆートコ大好きだなぁ。 同じ村出身だというのに、この品の良さは何なんだろうか。 別にイイトコのお坊ちゃんってわけでもないのに、小太郎はどこか品がある。 正真正銘のボンボンである晋助と比較してもその差は歴然だ。 ホント、人って生まれじゃないのよね。 『あっ、えぇっと……エリーも食べる?』 つい小太郎に見とれていたアタシは、 小太郎の後ろで熱い視線を送ってくるエリザベスに気づき、声をかけた。 熱い視線といってもこの人(?)着ぐるみだし、 常に同じ目をしてるからこっち見てるのかどうかも分からないんだけど。 でもそんな事を小太郎の前で言うと 「!お前はエリザベスが嫌いなのか!? そんなことでこの先俺とやっていけると思っているのか!?」 と、かなり電波の入った怒られ方をするのでもう二度と言わないけど。 小太郎ってカッコ良くて品があって真面目で礼儀正しくて、 流石“狂乱の貴公子”と呼ばれただけあるなぁとは思うけど、 過激派から穏健派になってからは ちょっとどころかかなり電波さんになっちゃったのが残念なところよね。 まぁ、そういう所も全部ひっくるめてアタシは小太郎が大好きなんだけどっ。 「気を遣わせてすまんな。良かったなエリザベス、に礼を言っておけよ。」 小太郎がそう言えば、エリーは「ありがと」と書かれたプラカードを掲げた。 『いやいや、喜んでもらえて嬉しいよ。 あっ、そういえばね、銀時が今度一緒に飲みに行こうって言ってたよ。』 「ほぅ、銀時がそんなことを。 久しぶりに坂本と3人で語り合うのも悪くないかもな。」 『えぇー?アタシは入れてくれないの?』 小太郎の言葉にアタシが冗談っぽくそう言えば、 真面目な小太郎は眉をハの字にしてオロオロし始めた。 「い、いや、そういうわけではない! 俺がを蔑ろにするわけがないだろう!」 『あはは、分かってるって。男同士にしか分からない世界があるんだよね。』 アタシが笑いながらそう言えば、小太郎はちょっと驚いた顔をして、 そして安心したように息を吐いて「全くお前は……」と微笑んでくれた。 『アタシね、小太郎のそーゆー真面目なトコ好きだよ。』 「す、好きだなどと、人前で軽々しく言うものではない。」 『あれっ、小太郎照れてるの?』 「てっ、照れてなどいない!」 『うそ!照れてるじゃん!』 「照れてない!」 『小太郎かわいー♪』 「可愛いとか言うな!」 アタシがからかうと小太郎は真っ赤な顔をしてそう叫んだ。 口調こそ怒ってはいるものの、その反応はいかにも照れてますって感じで、 アタシは思わず声を出して笑ってしまった。 するとエリーが小太郎に向かって「かっわいーw」とプラカードを出したので、 小太郎は怒ってエリーを殴り、アタシはまたお腹を抱えて笑った。 「全く……には敵わんな。」 困ったような笑顔でアタシに振り返りながらそう言った小太郎に、 アタシは涙を拭いながら『そう?』と言葉を返した。 すると小太郎は「あぁ、」と軽く返事をして、 それからアタシに優しく微笑みかけながらこんな言葉を投げかけてきた。 「お前は昔から何も変わっていない。 俺はお前のそういうところが好きだ。」 さっき自分で好きなんて軽々しく言うなと言っておきながら、 自分は超絶カッコいい微笑み付きで言い放つなんて、ズルすぎる。 その表情と言葉に思わずキュンとしてしまったアタシは、 咄嗟に小太郎から目線を外して小さな声で抗議した。 『さっ、さっきはそういうのダメだって言ったくせに。』 「俺は本気だからな。」 『そっ、そんなのアタシだって!小太郎のバカ!』 「バカじゃない桂だ。そしてお前もいづれは桂だ。」 ほらまた真顔でそういうこと言う! そう言ってやりたかったが、生憎アタシは自分の真っ赤な顔を隠すので精一杯で、 出来るだけ顔を見られないように俯きながら 抗議の目で小太郎を睨みつける事しか出来なかった。 「、それは上目遣いと言うんだぞ。」 『言わないよ!睨んでるの!』 「なぁ、俺の夢を教えてやろうか。」 アタシの言葉なんて華麗にスルーして、 小太郎は橋の下に流れている川を眺めながらそう言った。 「じゃない桂だ。」 人の話を遮って突然話を変えたかと思ったらこの謎の発言。 アタシは小太郎の言いたいことがよく分からなくて、 何も言わずただ黙って小太郎を見つめ続けた。 すると小太郎はアタシの方に顔を向け、フ、と目を細めて微笑んだ。 「いつか言ってみたいんだ。」 その“いつか”というのが、2人が結ばれる日の事だと理解した瞬間、 アタシの体温はまたしても急上昇してしまった。 『……小太郎って、やっぱりちょっと変だよね。』 アタシのその呟くような声は ドキドキとうるさい心臓にかき消されてしまうそうだったけど、 ちゃんと小太郎の耳には届いていたらしく、 小太郎はちょっとだけムッとした顔をしていた。 『それに……それはアタシの台詞でしょ?』 アタシが照れながらそう微笑むと、今度は小太郎の顔が真っ赤に染まっていった。甘酸っぱい攻防戦
(……全く、には一生勝てる気がせんな) (そんなことないよ、アタシだってもうノックアウト寸前だもん) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 初めてヅラ書いたけど、奴はこんなにまともじゃないはずだ。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2011/02/20 管理人:かほ