『小太郎ってさぁ、ズルいよね。』 「……何だいきなり。」 アタシがムスッとした顔で向かいに座っていた小太郎に言えば、 小太郎はいつものお堅い顔のままアタシの顔を見つめてきた。 『だって小太郎って文字通り女顔負けの美人さんなんだもん。 一緒に居るアタシが肩身狭いよ……アタシは女なのにさぁー。』 「は十分美しいではないか。いや、美人というよりは可愛いだな。」 小太郎が大真面目にそんな恥ずかしいことを言うもんだから、 アタシは思わず顔を真っ赤に染め上げた。 でもやっぱりなんかズルい。 小太郎はアタシのこと可愛いって言ってくれるけど、 周りから見たらやっぱり小太郎は綺麗で整った顔で、文句なしの美人さんだ。 小太郎はそんなこと全然気にも留めていないんだろうけど、 アタシはやっぱり劣等感というか、どこか引け目を感じてしまう。 小太郎がアタシを必要としてくれていることは十分理解してるし、 アタシも小太郎が好きだからずっと一緒に居たいって思ってる。 でもやっぱり頭の片隅でいつも考えてしまう。 本当にアタシなんかが小太郎の隣に居てもいいものなんだろうかと。 「、頭を上げろ。」 いつの間にか頭を垂れて悩みこんでいたアタシに、小太郎が静かにそう言った。 その言葉にアタシが「なに?」と言いながら顔を上げれば、 そこには小太郎の顔ではなく、鼻眼鏡をかけたアホ面がアタシを見つめていた。 『ぷわっはっは!!小太郎アンタ何やってんの!?』 本当にいきなりのことだったので、アタシは思わず盛大に吹き出してしまった。 顔を上げたらバカみたいな鼻眼鏡なんて不意打ち過ぎる。 不覚にもツボにはまってしまったアタシは、 いかにも厳かな様子で腕組みをしている鼻眼鏡を目の前にお腹を抱えて笑ってしまった。 「この俺ではどうだろうか。まだズルいと思うか?」 『あっはっは!何?一体どういうこと?ズルいって何?不意打ちがズルいってこと? そりゃズルいよいきなりその顔っ……ぷわっはっは!』 「そうではない、美人だ何だという話だ。」 不機嫌そうに放たれた小太郎のその一言に、 アタシは思わず笑いを止め、バッと顔を上げて小太郎の顔を見つめた。 でも顔を上げるとやっぱりアホ面鼻眼鏡がこっちを見つめていたので、 アタシは思わず吹き出してしまい、小太郎からは目を背けることに決めた。 「俺には自分の容姿を変える事は出来ん。 だが、そのせいでを傷つけているのであれば、俺はこの顔を隠そう。」 『小太郎……。』 アタシは小太郎の顔は見ないままでそう言った。 小太郎、さっきのアタシの言葉をそこまで真剣に考えてくれたんだ……。 そりゃ本当に小太郎のこと、美人でズルいって思ってるけど、 そこまで真剣に言ってたわけじゃないっていうか、 ちょっと拗ねてみただけって言うか……。 小太郎の真摯な対応(?)になんだか急に罪悪感を感じてしまい、 アタシは顔は見ないままで小太郎の顔から鼻眼鏡を奪い取った。 「オイ!」 『隠さないで。』 アタシが小太郎の言葉を遮るように言えば、 小太郎は「しかし……」と情けない顔をする。 『小太郎はアタシのこと、どれくらい好き?』 「そんなもの口で伝えられるものではない。」 『じゃあアタシのこと世界で一番好き?』 「いいや、宇宙で一番だ。」 『自分のことよりも好き?』 「無論だ。のためならばこの身を捨てても構わない。」 アタシの質問に真剣な眼差しで答えてくれる小太郎に、アタシは思わず微笑んだ。 『アタシも一緒。アタシも、小太郎のこと自分のことより好き。』 「……。」 『だから小太郎のその顔も大好き。』 言いながらアタシが小太郎に抱きつけば、 小太郎は何も言わずにアタシをギュッと抱きしめ返してくれた。 『ゴメンね、ちょっと拗ねちゃった。』 「いや、いいんだ。俺がを不安にさせたのなら俺にも非はある。」 『小太郎は全然悪くないよ。 悪いとしたらアタシを小太郎を超える美人に産んでくれなかった神様だよ。』 「俺は神様とやらに感謝しているぞ?をこんなイイ女に産んでくれた。」 その言葉にアタシは驚いて、 『小太郎……』と呟きながらそっと小太郎から離れてその真剣な顔を見た。 「それに、俺とを引き合わせてくれた。 いや、きっかけが攘夷戦争だから、むしろ憎むべきなのか……?」 自問自答して真剣に考え始めてしまった小太郎に、アタシは思わず笑ってしまった。 小太郎のこーゆーバカみたいに真面目なところが大好き。 何でもかんでも真に受けて、何でもかんでも真剣に考えて……。 裏表がなくて、真っ直ぐにアタシを愛してくれる。 『小太郎。』 「何だ。ちょっと待ってくれ。今俺と神との関係性についてだな……。」 『大好きっ!!』 アタシが言いながら小太郎にガバッと抱きつけば、 小太郎はとても驚いた顔でアタシの体を支えてくれた。優しい優しい鼻眼鏡
(あーもうっ好き!小太郎大好き!好き好き大好きー!) (そ、そう好きを何度も叫ぶな……流石の俺でも照れるぞ) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 六万打本当にありがとうございました! 攘夷組の中で一番いい男なのはヅラなのかもしれない。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2011/10/16 管理人:かほ